通訳の仕事と子育ての両立【マイストーリー】

 

「なぜ通訳者翻訳者になったのですか」――答えはきっと人それぞれ。バックグラウンドや経緯、めざす通訳者翻訳者像など、通訳者翻訳者が10人いれば、10通りの道があるはずです。この「マイストーリー」ではサイマル・インターナショナルで活躍する通訳者翻訳者の多彩なストーリーを不定期連載でご紹介。今回は研修コーディネーターから通訳者に転向した菱田奈津紀さんの登場です。

通訳者をめざしたきっかけ

通訳者にキャリアチェンジする前、私は語学研修を企画・運営する会社で、クライアント・コーディネーターをしていました。これは企業や官公庁の語学研修を企画し、教材を選定、ネイティブスピーカー講師を派遣して研修を実施する仕事です。

この仕事の中で、時折クライアントとネイティブ講師の間で簡単な通訳をすることがありました。コーディネーターとしてさまざまな業務がある中、私はこの通訳をしている時間が何よりも好きでした。コミュニケーションのお手伝いをすることに大きなやりがいと楽しさを感じ、英語を活かせる仕事として本格的に通訳者をめざしてみたいと思うようになっていったのです。

通訳訓練を受けて社内通訳者

通訳者への道を探る中、「短期集中で学びたい」「海外で生活してみたい」という思いが強くなり、アメリカ・ロサンゼルスの通訳学校に留学することを決めました。アメリカで通訳を学びながら、日々の生活からもさまざまな知識を吸収できたことは、現在の仕事に役立っていると感じています。

こうして全日制の通訳学校で1年間の通訳訓練を積んで帰国した後、外資系企業で取締役付きの通訳兼秘書の仕事に就きました。そこから13年間、途中2回の育児休暇を経て、異なる分野4社の社内通訳を経験しました。

 

子育てとの両立をめざしてフリーランス通訳者

大きなキャリアチェンジは、社内通訳からフリーランスへ転向したときです。
私の通訳の道は、通訳者として少しずつ新たな挑戦を重ねていくと同時に、2人の娘の母としての工夫と調整の日々でもあります。

社内通訳時代の後半には、次女が小学生になるタイミングでフリーランスになりたいと決めていました。そこで、次女が保育園の年長になった社内通訳最後の年に、エージェントへのフリーランス登録を始めました。同時に、更なる知識やスキル向上のため、通訳者向けキャリアアップ講座や、分野別の集中講座なども積極的に受講しました。

サイマル・インターナショナルとのご縁の始まりもこの頃です。長井鞠子さんの同時通訳講座を受講したことが、サイマル登録のきっかけとなりました。最後の半年は、社内通訳を続けながら、アメリカ人の上司が一時帰国する間の休暇を活用してフリーランスのお仕事を始めました。

 

短い期間でしたが、社内通訳を続けながらフリーランスの仕事を始められたことは、スムーズなフリーランスへの転向に繋がったと思います。また独立後にも、勤めていた会社からフリーランスとして仕事をご依頼いただけたこともありがたかったです。キャリアチェンジを応援してくれた会社には今も本当に感謝しています。

 

キャリアを築く上で大切なこと

振り返ってみると、計画的にキャリアを築いてきた側面もありますが、それ以上に出会いやご縁に導かれてきたと感じています。私は、頼まれたことや出逢えた仕事はまずやりたいと思う性格なので、仕事と子育ても「どうしたら両方やりたいことをできるか?」を考え、その方法を見つけ出してきたように思います。娘たちが小さかった社内通訳の時から「海外出張できますか?」「会議を延長しますが残業の対応できますか?」といったオファーもお断りしたことはほぼありません。フリーランスになってからも、一見難しそうに思えるスケジュールでも、家族や、時に友人たちの協力を得ながら、方法を見つけてやりたい仕事に挑戦してきました。

 

キャリアを築いていく上では計画や準備も重要ですが、突然の出逢いに反応できる直感、周りの理解や協力を得るための細やかなコミュニケーションもとても大切です。家族や仕事の方々など、自分の周りに応援団ができることもキャリアチェンジの大きな支えになると感じます。


人生のステージに合わせて形を変えながら共に歩んできた通訳の仕事を、これからも挑戦のスピリットで楽しんでいきたいと思います。

菱田写真
菱田奈津紀(ひしだなつき)

会議通訳者。アメリカ留学で通訳訓練を受け、帰国後はスリーエム ジャパン株式会社など外資系企業数社でエグゼクティブ専属の社内通訳を10年間務める。2019年に独立。国際会議や外交、ビジネスの場で活動を広げる。好きな分野は国際協力、安全保障、社会課題、製造業など。趣味は娘たちとのバレエ鑑賞と旅。

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