メディカル翻訳者としてより良い仕事をしたい、活躍の幅を広げたい方に向けた今シリーズ。最終回は、サイマルでプロとして活躍中のメディカル翻訳者お二人に、ご自身のキャリアやメディカル翻訳ならではの特徴、サイマルでメディカル翻訳者として働く魅力などを伺いました。
メディカル翻訳者をめざしたきっかけ
――お二人とも、サイマルでは医薬・医療機器両分野の幅広い文書に対応いただいていますが、そもそもメディカル翻訳者をめざしたきっかけは何でしょうか。
柴田麻衣さん(以下、柴):フリーに転向した後も、過去に社内翻訳者として勤めていた翻訳会社から、技術、観光、IRなどあらゆる分野の翻訳を来るもの拒まず請け、医薬専門の翻訳者ではありませんでした。一方、20代で立ち上げた個人翻訳事務所へは、医学・看護分野の論文、抄録、書籍の翻訳を多く依頼いただき、EBM*分野の英日翻訳などを通じて、英語圏の医学分野で使用される用語や表現を体得していました。
*Evidence-based medicineの略。「科学的根拠に基づく医療」とも呼ばれる。信頼性の高い臨床試験と統計学的手法でエビデンスが確認された治療を患者に適用する医療のあり方。
翻訳の世界に飛び込んで20年。フリーランスとして独立してからも15年が経過し、そろそろ翻訳者としても年齢的にもベテランの域に入り「あれもやったし、これもやった、でもどれが一番得意か……」と自問した結果、医薬分野を今後の強みにしたいと思うようになったのです。
サイマルに登録した経緯
柴:もともと、通訳や翻訳の仕事をしている母やその仕事仲間からサイマルのことは聞いていたのですが、「憧れるけど、ちょっとハードル高いかな……」と感じていたんです。でも、得意な分野に絞り込んで専門性を高めていくために「取り扱う案件も登録されている方々のレベルも高いサイマルで、スキルアップを図りたい!」と登録を希望しました。
――岡﨑さんはいかがですか。
岡﨑雅子さん(以下、岡) :翻訳の仕事ができたらかっこいいな、と思ったのは高校生の頃ですが、具体的な目標になったのは、就職した外資系の医療機器の会社で、海外製造元とのやりとりが頻繁に行われる環境におかれてからです。英語を本格的に学ぶために海外留学するにあたって帰国後の生活を考えたときに、翻訳者になるという目標を実現したいと思いました。
カナダに渡りカレッジで医学系のプログラムを修了し、インターン先の病院で雇ってもらうことができました。英語は上達しましたが、翻訳とはかけ離れた生活が続きました。その後8年間のカナダ生活を終え、アメリカに移住しました。
――そこからどのようにメディカル翻訳者へとあゆみを進めたのでしょうか。
岡 :アメリカでは医療事務の資格や、難しいと言われているコーディングの資格(CPC)を取りましたが、雇ってもらうことはできませんでした。そこで、アメリカでの生活を続けるために「私にしかできないこと、日本人としてできることを追求しよう」と、再び翻訳者になるという夢を追いかけることにしたんです。英語や医学の知識には少し自信があったので、最初から医薬翻訳に特化して仕事を探し、まずトライアルに合格した校閲の仕事をたくさんこなしました。
校閲の仕事を通じて、良い翻訳もそうではない翻訳も数えきれないほど目にして、よく使われる表現や用語も学びました。校閲の仕事が翻訳の勉強にもなり、いよいよ翻訳中心にシフトしたいと、思い切ってサイマルに応募しました。最初は医療機器分野の翻訳者・チェッカーに合格したのですが、登録面談の際に医療関係の資格や医薬翻訳の校閲実績もあると伝えたところ、医薬分野の試訳も受験を勧められ、これが結果的に仕事の幅を大きく広げることに繋がりました。
――面談でのご提案がその後の活躍に繋がったというのは、採用担当としてとても嬉しく思います。実際に登録してみていかがでしたか。
岡 :翻訳者としての経験はまだ浅いですが、幸運なことに絶えずお仕事をいただいています。サイマルに登録して良かったと思う理由の一つは、多岐にわたる分野でお仕事がいただけることです。医薬翻訳で一般的に扱われる治験実施計画書や治験薬概要書の和訳にとどまらず、診療ガイドラインの英訳や医療機器のトレーニングビデオの字幕和訳なども依頼があり、翻訳スキルの向上や新たな知識の獲得に繋がっています。日本人翻訳者には和訳案件のみを依頼する会社が多い中、サイマルからは和訳と同じぐらいの頻度で英訳案件をご紹介いただいています。
メディカル翻訳の特徴と魅力
――とても充実されているようですね。柴田さんがメディカル翻訳が他の分野と違うと感じられるのは、どんなところでしょうか。
柴:医薬分野の案件は、悪文との遭遇率が低いと感じています。信頼できる情報源を入手しやすいこともメリットですね。専門的な用語や表現を押さえ、信頼できる情報源を見つけてしっかり調査し、筋道を理解しながら翻訳すれば、最終的に自分が納得できる成果物を提供できる点が、私にとっては大きな魅力です。
ちなみに、簡潔明瞭でわかりやすく翻訳することは、メディカル翻訳に限らず翻訳の基本中の基本ですが、言うは易し行うは難しで、私にとっても今も今後も、大きな課題です。WebMD 、Mayo Clinic 、Medline Plus などの医療情報サイトで紹介されている記事は、一般向けの内容ではありますが、まさに一度読んだだけで頭に入ってくるような理想的な書かれ方で、内容もとても面白いので、楽しみながら英語の感覚を養うのにおすすめです。
――岡﨑さんはいかがでしょう。
岡:メディカル翻訳では、厳格なガイドラインや規制が存在するため、通常、使用しなければならない用語や表現が定められていることが、他分野との大きな違いであると感じます。これらのガイドラインや規制を徹底的に理解し遵守すれば、翻訳の負担はかなり軽減されます。逆にこれらを無視すると、承認の遅延や不承認など重大な問題が生じる可能性があります。業界ガイドラインや法規制はメディカル翻訳者にとって必須なので、私も頻繁に確認し、定訳を用いて正確な翻訳に努めています。
サイマルに登録して良かったこと
――ところで、サイマルと他の翻訳会社で、ご依頼の仕方や仕事の進め方、コーディネーターの関わり方に違うと感じる点などはありますか。
柴:サイマルは、一人一人の翻訳者に気を配ってくれているなと感じます。先日、日頃からお仕事をいただいているコーディネーターのUさんとお話しした際、私が日頃から心がけている些細なことにも気づいて、理解してくださっていました。非常に感動し、この人のためにもっとがんばろう、という気持ちになりました。業務のやり取りの中でも、翻訳者の業務負担への配慮が伝わってきます。
岡:私も同感です。他の会社にも複数登録してきましたが、サイマルでは多くの登録者の一人ではなく、翻訳者個人個人に相対し、尊重してくれていると感じています。海外在住者にとって、時差は厄介な問題の一つですが、サイマルでは、コーディネーターが個別に連絡をくださる上に対応も早く、時差があっても私の返答を待ってくださいます。他社でよくある、 返信する頃には既に他の方に仕事が回されてしまう、という状況には遭遇したことがありません。
メディカル翻訳者として活躍したい方へ
――最後に、サイマルでメディカル翻訳者として活躍してみようと検討中の方へメッセージをお願いします。
岡:英検やTOEICのように分かりやすい目安があるわけではないため、実際のお仕事を請ける前に「メディカル翻訳者として完全に準備が整った」とは感じられないかもしれません。私も何度も応募をためらいました。ですが、大変ながらもやりがいのある大規模な案件などを任せてもらえるようになった今、思い切ってサイマルに応募して本当に良かったと思っています。メディカル翻訳者としてキャリアを積んでいく第一歩として、まずは応募してみることをお勧めします。
柴:サイマルは、がんばりをきちんと評価してくれる会社だと思います。仕事をしていてどうしようもなくしんどくなってしまう時、努力を認めて評価してもらえるということは、本当に大きな励みになります。「よし、もっとがんばろう。もっと上をめざそう」という力をもらえる会社に出会えて本当によかったと、心からそう思っています。
――お二人とも、サイマルへの応募が翻訳者としての成長や充実につながっているのですね。柴田さん、岡﨑さん、貴重なお話をどうもありがとうございました。
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