パフォーマンス向上のための3つの習慣【プロ通訳者のスキル向上メニュー】

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第一線で活躍するプロの通訳者は、スキル向上のためにどんなことを心がけ、実践しているのでしょうか。このシリーズでは、サイマルで活躍する通訳者が、多忙な中、更なる向上をめざし日々実践していることなどを紹介します。

自分の現状・課題を認識し、解決策を実行していく

会議通訳者野間口蓮海と申します。本記事では、通訳者としてのスキル・知識のアップデートに必要な要素についてお伝えするとともに、私がスキルアップのために行っていることをご紹介したいと思います。

通訳者のスキルアップのために必要な要素は多岐にわたります。主な例としては、日本語・外国語の運用能力の向上、専門知識・背景知識の習得、そして通訳技術そのものの改善などが挙げられます。通訳者は自分のパフォーマンスを向上させるため、それぞれの領域における自らの課題は何かを認識し、その解決を図っていくことになります。

スキルアップにおいて重要なのは、この「自分自身の課題を自ら把握しその解決に努める必要がある」という点です。通訳者として様々な現場で仕事をするようになると、自分のパフォーマンスについて細かな指摘を受ける機会はほとんどありません。具体的に自分の訳出のどこが良かったか、悪かったかについてクライアントから詳細なフィードバックをもらえることは稀です。通訳者養成学校などでは、講師が生徒一人ひとりのパフォーマンスを評価し、どう改善すればいいのかアドバイスをしてくれます。しかし、ひとたび現場に出ると、通訳者が自分の責任でパフォーマンスの良し悪しを把握し、継続的に改善していかなくてはなりません。ただ業務経験を積むだけではなく、自分の現状はどうなのか、どういった課題があるのかを認識し、その解決策を適宜検討し、実行していくことが必要です。

また、通訳訓練では元の発言をどのくらい訳すことができたか、訳出そのものが主な焦点になりますが、多くの現場において重要なのは話し手と聴き手の間のコミュニケーションを成立させることです。それを円滑にするためには、通訳者が聴き手に分かりやすく訳し、話をかみ合わせていく必要があります。そのためスキルアップを考えるうえでは「コミュニケーションをより円滑にする通訳ができるようになるには何が必要か?」という問いを意識することが大切です。

音読、語彙力強化、そして……

続いて、私が具体的にスキルアップのために行っていることを三つ取り上げたいと思います。一つ目は「音読」です。英語の音読は私が通訳者養成学校に通っている頃からの習慣です。私は海外経験がなく、英語の運用能力は特に改善が必要だと認識しています。そのため「自分の口で英語を話す」時間をとにかく増やそうと考え、音読を続けています。教材は『NHKラジオ 実践ビジネス英語』を長年愛用しています。音読を継続することで日英訳出時の流暢さやパフォーマンスの改善につながっていると感じており、自分の調子を計るバロメーターにもなっています。

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左は音読用の『NHKラジオ 実践ビジネス英語』。右は語彙力強化用の教材


二つ目は「語彙力強化」です。通訳者は幅広い分野の知識を身につける必要があります。私は特に力を入れたい分野については、書籍を複数冊用い、用語を抽出して対訳をつけ、それを適宜確認することで語彙力の強化を行っています。具体的には、その分野についての基礎書籍、用語集、あるいは英単語・英語表現などをまとめた単語集などを使用します。そこからなじみのない用語を拾ってテキストファイルに転記し、用語の説明と併せてまとめていきます。それを折に触れて復習することで特定分野の単語と基礎知識を学んでいます。あらかじめ用語と基礎知識を押さえておくことで、その分野の案件予習時の効率を高めることができ、また議論をよりスムーズに理解することができます。

三つ目は「反省」です。案件ごとに自分のパフォーマンスはどうだったか、うまくいかなかった場合はその原因は何か、どうすれば改善できるか、などを反省してノートに記し、その内容を日々の学習・訓練内容に反映し、次の案件に活かしています。通訳は、楽器の演奏やスポーツなどと同様に「技術」です。技術をより向上させていくためには、自分の実力の客観的な把握、それに対する批判的観点とフィードバック、自分の課題を改善するための訓練が必要となります。日々の反省は自分の現状認識と自分自身に対するフィードバックを行う機会となり、パフォーマンスを継続的に改善していくために役立っています。

三つの具体例を取り上げましたが、もちろん通訳者として行うべきことはこれがすべてではありません。また、日々の案件の準備や予習にも十分な時間をかける必要がありますので、私はスキルアップのために必要なことは隙間時間と休日の時間を活用しながら進めています。また、やることのタイミングや場所などを決めて習慣化してしまい、着手する心理的負担が小さくなるようにも努めています。

この記事に書かれていること以外にも、通訳者としてのスキル向上の考え方や方法、取り組み方には様々なものがあります。それぞれの通訳者の方に合った方法があるかと思いますので、そのような自分に適した手法を検討するうえで本記事が少しでも参考になれば幸いです。



野間口蓮海さん
野間口蓮海(のまぐちはすみ)

東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。大学卒業後、半導体関連企業にて技術翻訳と通訳に携わる。サイマル・アカデミーインターネット講座受講を経て、2015年にサイマル・アカデミーに入学。卒業後、コンサルティングファームに社内通訳として勤務。現在はサイマル・インターナショナルの専属通訳者として会議通訳等を数多く担当する。

 

 


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