withコロナをきっかけにさらに進化するサイマルの通訳・翻訳【サイマル通信 特別編】

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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、国際会議や大型スポーツイベントなどの中止・延期が相次いでいます。長引くコロナ渦において、通訳・翻訳業界はWithコロナでどのように向かい合っていけばよいのでしょうか。今回は国内トップクラスの通訳・翻訳エージェント「サイマル・インターナショナル」の林純一社長※に、サイマルにおける現状や注力している取り組み、今後の展望などについて聞きました。

コロナ禍で見えた通訳・翻訳の新しい姿

――2020年はサイマル創立55周年という節目でしたが、思いがけない年になりましたね。コロナの影響というのはいつ頃から出始めたのでしょうか。

:そうですね……4月の緊急事態宣言前後から、大きな変化がありました。通訳は大規模なカンファレンスがゼロになりましたし、翻訳も海外との大型プロジェクトなどが軒並み延期となりました。とはいえ、日常的な定例案件など、止めるわけにいかない案件も多く、そこは変わらず稼働していたような状態です。

現在はどのような状況でしょう。

:5月下旬に緊急事態宣言が解除されてから、案件数は急速に回復しており、8月時点で7~8割ほどまでになっています。秋は最も通訳案件が多い時期で、今年も例年通り、多くなるのではと予測しています。ただ先ほどもお話ししたように、海外との往来がほぼ止まっている状態なので、スピーカーを多数招へいしての大規模カンファレンスやイベントなどの案件はいまだにほとんど発生していません。

――大案件がなくなったにもかかわらず、案件数が7~8割まで回復した要因は何でしょうか。

サイマルでは長年お付き合いいただいているクライアントが多く、定例的な案件を多くいただいています。コロナ禍が始まった頃は中止や様子見をしていたものの、いつまでも止めているわけにはいかない。そういう案件の再開は大きいと思います。どんなに実施規模の縮小や形式変更をしても、案件における通訳や翻訳の必要性というのは変わりませんからね。

インタープリファイがもたらした物理的・心理的変化

:また、昨年導入した遠隔同時通訳プラットフォーム「interprefy(インタープリファイ)」の存在も非常に大きいです。多くの企業・団体がコロナ対策でZoomやV-CUBE、Teamsで会議やセミナーを実施するようになりましたが、それに伴い遠隔同時通訳(RSI)への関心・需要も高まっていきました。インタープリファイ自体の世界規模での利用実績や高評価に加え、クオリティの高いサイマル通訳者を手配できるという点が「絶対に案件を失敗させたくない」クライアントの安心感や信頼感につながったのではないでしょうか。

7月には500人規模のオンライン会議、8月には3000人規模のカンファレンスなどにもご利用いただきましたが、こうした案件は今後も増えていくのではと考えています。コロナ禍に限らず、今後の同時通訳を伴う様々なケースに対し、新たな選択肢をご提供できたのではと思っています。

――コロナがきっかけで「インタープリファイ+サイマル通訳者」の強みがクライアントに認識され始めたのですね。一方で通訳者翻訳者側の変化というのは感じられましたでしょうか。

翻訳者はもともと在宅勤務が基本で、ある意味在宅ワークの先駆者ですので、この状況でもスムーズに対応されていたのではと思います。

通訳者については、やはりインタープリファイですね。導入当初は苦手意識や不安を持つ方もいましたが、実際に使用してみたら、操作もしやすく、いつもと変わらないパフォーマンスができることに安心された方が多いようです。最近は「リモート業務にはどんなPCがいいか」「通信環境をもっと良くするにはどうすればよいか」といったご相談をいただくなど、皆さん、とても前向きかつ柔軟に変化に対応されている気がします。

そもそもインタープリファイは通訳者の環境整備にも効果的なんです。例えば猛暑や激しい大雨の中、大変な思いをして現場まで出向き、狭い通訳ブースの中に長時間……というのは、それだけでひと仕事ですよね。それに遠方の現場であれば、移動や拘束時間も多くなります。インタープリファイであれば、そういった物理的・心理的ストレスを減らして効率的に業務ができるので、良い状態でパフォーマンスに集中していただけると思います。

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感染防止対策としてサイマル社内の各会議室にも消毒セットが一式設置されています。

社員の健康を守ることがクライアント、登録者を守ることにつながる

――ところで、サイマルでは社員へのコロナ対策も色々実施されていますよね。

:はい。クライアント、通訳者翻訳者の皆さんのためにも社員の健康に注意を払い、決して案件を止めないように注力しています。社員は在宅と出社勤務を交替で行いつつも、情報共有や連携が取れるよう心がけています。また消毒液の設置、社員へのマスク配布などの感染対策も実施しています。マスクに関しては些少ではありますが、現状でサイマルがお役に立てることとして、コロナ患者を受けて入れている医療機関へも寄付させていだたきました。

「いい仕事をしたい」通訳者翻訳者と「いい仕事をしてほしい」クライアントをつなげる

――最後になりますが、通訳者翻訳者の皆さんにメッセージをお願いします。

:コロナ収束後、通訳も翻訳も「機械にとってかわられてしまうのでは」と心配する声をよく耳にします。しかし、私は決してそんなことにはならないと考えています。以前AIサービスの開発に携わっていましたが、AIには限界があり、不可能な領域というものがあると感じているからです。

世の中の自動通訳、自動翻訳というサ-ビスは和訳・英訳であり、通訳・翻訳とはまったく異なるもので、 ただ「この人のこの言葉をそのまま訳しました」です。

しかし、通訳・翻訳と言うのは「この人の言葉を別の人に通わせる」ために、時に補足し、表現や文脈を整えて訳す必要があります。そのため、事前にどんな案件か膨大な資料を調べ、読み込み、頭の中で推測したうえ、案件に臨むのです。

「相手は何を求めているのか」を想像し、準備をする。それをとことん磨いて突き詰めていける人は絶対に今後もお仕事があると思っています。逆に、そうでない人のお仕事や自動通訳・翻訳でも十分事足りる案件は、今後、機械が取って替わっていくかもしれません。そうやってそぎ落として残っていった人間らしい仕事こそ、サイマルのクライアントが求めているものであり、どんな状況であっても需要が減ることはないのです。

「いい仕事をしたい」と願う通訳者翻訳者と「いい仕事をしてほしい」というクライアントをつなげる――それがサイマルの役目です。今後も私たちは良い通訳・良い翻訳をしてもらえる環境を提供するべく尽力していきますので、やりがいのある仕事をたくさんやりたいと考えている通訳者翻訳者の皆さんには、ぜひサイマルでともに切磋琢磨していただきたいと考えています。

※2020年当時

『通訳・翻訳ブック』編集部

通訳・翻訳をキーワードに、仕事に役立つ情報からウェルビーイングに関するトピックまで、幅広い記事をお届け中。
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