インフルエンザ、ノロウイルス……冬の感染症にご用心!【すぐに役立つ健康講座】

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日々多忙で、心身ともにハードな業務をこなす通訳者翻訳者にとって、健康管理は大事な仕事のひとつです。仕事はもちろん、快適な日常生活を送るため、病気にならない体づくりをめざしましょう。今回は、この時期に気をつけるべき感染症、インフルエンザとノロウイルスについて、国立研究開発法人国立国際医療研究センターの木下典子先生に、特徴や予防法などを伺いました。

冬にインフルエンザやノロウイルスが大流行する理由

インフルエンザもノロウイルスもウイルス性の感染症です。ウイルスは空気が乾燥すると空気中に飛散しやすくなります。また、鼻や喉の防御機能は乾燥により低下すると言われているのに加え、気温が下がると私たち人間の細胞活性が弱まるため、免疫が弱って感染する人が多くなると言われています。

インフルエンザの場合、感染の1日前位から感染力が発生すると言われています。例えば、咳や鼻水などの症状が出るとマスクをする、という人が多いと思いますが、そういった症状が出る前日から強い感染力があるために、職場や学校など人が集まる場所で飛沫感染が広がりやすいのです。

ノロウイルスは現在34種類ほど存在していますが、いずれも非常に感染性が強いため、流行しやすいと言われています。

インフルエンザの特徴や風邪との見分け方

インフルエンザは非常に広い意味で言うと風邪の一種です。風邪の中にはたくさんのウイルスがあって、そのなかのひとつの病原体がインフルエンザと言われています。

では、何故これほどインフルエンザが注目されたり、予防や治療法が開発されているかというと、大流行をしやすく、合併症を起こしやすいためです。過去に世界的大流行を起こしたスペイン⾵邪や香港風邪などもインフルエンザの一種です。

インフルエンザの患者さんと接触してから症状が出るまでの間を潜伏期間と言いますが、大体1~4日間です。 感染すると高熱や節々の痛み、倦怠感、のどの痛みや咳、鼻水などの気道症状が生じます。通常は2、3日高熱が続いた後、徐々に症状が治まっていくのですが、中には肺炎を合併したり、高熱に伴うけいれんを引き起こす場合もあります。

一般的な風邪との見分け方は、高熱が出る点です。一気に39、40度くらいの高熱が出た場合はインフルエンザを疑った方が良いでしょう。また、同僚や友人など、近くで接した人の中にインフルエンザの感染者がいた場合も、インフルエンザ感染の可能性大となります。

なお、インフルエンザにかかっても、すぐに病院に行かなければ……! というわけではありません。状態が落ち着いているようであれば、まずは体を休め、水分をとり、しっかり体を冷やすことも大切です。検査では12~24時間経たなければ陽性にならない場合もありますので、特に夜間は慌てて救急病院に駆け込むより、無理をせずご自宅で安静にして、日中に落ち着いて受診するのがよいでしょう。なお、その際はマスクを着用するなど、周囲に感染を広げないよう注意を払いましょう。

ノロウイルスの特徴

ノロウイルスは非常に感染性が強い胃腸炎です。生ガキなど、生の食べ物によって感染する場合と、人からうつる場合とがあります。潜伏期間が短く24~28時間程度で発症すると言われています。

症状としては、止まらないほどの激しいおう吐があげられます。人間の体は異物を外に出そうとするため、口に含んだものに対しておう吐という反応をしますが、異物が体内の奥まで入ってしまった場合は、下痢症状として出ることもあります。ほかには腹痛、38度くらいの熱が出る場合などもありますが、人によって程度は異なるため、判断が難しい場合もあります。

インフルエンザ予防に効く3種の神器

◆予防接種

やはり、まずは予防接種を受けていただくのが一番かと思います。インフルエンザの流行シーズンは例年11、12月頃から。その1ヵ月くらい前から各病院で予防接種が始まります。医療従事者としては、その時期にぜひ受けてほしいなと思います。タイミングを逃して接種し損ねたという人も、ワクチンの有効期間は6ヵ月くらいと言われていますし、特に冬の期間はずっと流行していますので、気づいたらすぐ接種すれば、抗体ができるので効果が期待できます。

◆手洗い

インフルエンザのウイルスはアルコールで死滅します。 まずは流水で15秒以上手洗いをする、もしくはアルコールを含んだ消毒液を2プッシュして、しっかり乾くまで消毒しましょう。人ごみに行った後や、外出した後は必須です。ちなみに、よく予防法にあげられるうがいですが、残念ながら医学的な効果は証明されていません。口腔内の雑菌を取り清潔に保つ、加湿するという意味では行っても良いかと思います。

◆マスク

飛沫は2メートルくらい飛ぶと言われています。咳やくしゃみはもちろん、会話でも飛沫感染の恐れがあります。離れた距離ですれ違うくらいでは問題ありませんが、体調が悪い時は人ごみではマスクを着用すると良いでしょう。

くわえて、喉を潤す加湿アイテムとしてもマスクは大変有効です。 また、人にうつさない、感染を広げないためにも、この時期に鼻水や咳の症状がある場合はマスクを着用するようにしましょう。

ノロウイルスは重症化を防ぐ、人にうつさないことが重要

先にも述べましたが、ノロウイルスは感染力が非常に強く、感染を防ぐ手立てがありません。 唯一の方法は、肉や魚介類は生食を避け、よく火を通すこと。ノロウイルスは熱に弱いという性質があるからです。熱では85度以上、1分で死滅すると言われています。また、忘れがちですが、調理器具の処理にも要注意です。包丁やまな板などについている生の肉汁などで感染する場合もあるので、加熱した食材が触れないよう用心しましょう。

◆もし、かかってしまったら?

感染性のおう吐の場合は、異物を出し切るためにも吐き切ってしまった方が良いです。脱水症状を防ぐため病院では点滴をする場合がありますが、自宅では経口補水液などを利用しましょう。経口補水液にはナトリウムというミネラルが含まれています。自宅にない場合は水に砂糖、塩、レモンを少々加えると、同じような成分のものが作れます。

一気に飲むと胃に刺激を与え、また吐いてしまう恐れがあるため、スプーン一杯ずつをゆっくりとこまめに、口の中を湿らせるようにとるようにしましょう。そうすれば脱水症状を防げます。

◆感染を広げないために

まずは手洗いです。インフルエンザと違ってノロウイルスにはアルコールが全く効きません。流水でしっかりとウイルスを落としましょう。

次に吐しゃ物の処理や消毒ですが、病院では次亜塩素酸ナトリウムを用いています。市販されている塩素系漂白剤でも、この次亜塩素酸ナトリウムを含んでいるものがありますので、台所用タイプで吐しゃ物やその周辺を拭いたり、衣類用タイプで洗濯するようにしましょう。また、吐しゃ物周辺だけでなく、共通で使用しているトイレやドアノブなど、接触したであろう場所は全てしっかり消毒することも必須です。

なお、カーペットなど、洗えない場所の場合は、完全に乾燥させてウイルスを死滅させることが大事です。ノロウイルスは熱に弱いので、ヘアドライヤーや布団乾燥機などを使用すると良いでしょう。

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感染症になりやすいタイミングを知って、感染を防ぐ

重症化のリスクという意味では、免疫力が弱い人や妊婦、幼児、糖尿病の人、インフルエンザに関してはアレルギーのある人が重症化しやすい傾向があります。

ちなみにノロウイルスでは⾎液型抗原の関係で、血液型によって感染率が異なるという報告もあります。O型の人がなりやすく、B型の人がなりにくいと言われていますが、ノロウイルスのタイプによって差があるため、一概には言い切れない部分もあります。

また、読者の皆さんのように普段元気で働いている方も、疲れている時や体力が落ちている時、ストレスを抱えている時などは免疫機能が少し下がるので注意が必要です。そのような時は無理をせず、休むようにしましょう。

日頃から免疫力を高めることを心がける

ストレスが免疫を弱めるので、「よく食べ、よく寝て、よく休む(休息する)」ことが大事です。基本的なことですが、なかなか実行できないことでもあります。ですが、特にこの時期は、少し体調がいつもと違うなと感じたら意識してこの三つを実行するよう心がけてください。また、ビタミンCには風邪の予防効果があります。かんきつ類などを積極的に摂り、健康な体で冬を乗り切りましょう。


木下先生
木下典子(きのしたのりこ)

感染症医師。地域で小児科医として従事し、その後、感染症を専門とする。2つのナショナルセンターで勤務。現在は国立国際医療研究センターに所属し、感染症診療・管理・予防の幅広い分野で活動する。子どもも大人も感染症から守るべく奮闘。小児科専門医・指導医、小児感染症認定指導医、感染症専門医、インフェクションコントロールドクターなど