コロナ禍での話し方 その3—―マスク着用時の息苦しさ【通訳者と声】

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聞き取りやすい日本語の発音、発声は優れた通訳パフォーマンスには欠かせませんが、マスクをしたまま通訳をすることも多い現在、その重要性はますます高まっています。このコラムでは、通訳者向けのボイストレーニング講座の講師としても活躍する轟美穂さんが、通訳者特有の課題にフォーカスし、声のスキルアップに役立つ情報を紹介します。

前回は、マスク選びについて触れました。今回は、マスク着用による息苦しさについてです。再び「マスクを着用したまま通訳をした時の声」について、知り合いの通訳者の方からヒアリングした内容をご紹介します。

  • マスクをしていると呼吸しづらく、吐く息でマスク内が熱くなり、熱中症のようにぼうっとしてしまう。
  • 同時通訳の途中でずっとマスクをしていて気持ちが悪くなってしまった。
  • 個人差があると思うが、私は同時通訳の途中で息苦しくなってしまった。


いかがですか? お仕事中に同じような感覚を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
コメント中の「吐く息でマスク内が熱くなり、熱中症のようにぼうっとしてしまう」については、特に夏場に危機感をもって感じられたかたもいらっしゃるかもしれません。

私自身も、短時間のマスク着用では全く気にならなかったのに、丸一日マスクをつけて話さなければならない日に、夕方頃から頭が痛くなってしまい、帰宅してマスクをはずし横になったら良くなった、ということがありました。

厚生労働省は「新しい生活様式における熱中症予防行動のポイント」において、

  • マスク着用時は、マスクを着用していない場合と比べると、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがある
  • したがって、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがある

と指摘し、

  • マスクを着用する場合には、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がける
  • また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要

との注意喚起をしています。(注1)

ここに明記されている身体の負担以外にも、呼気でマスクが湿気を帯びて「うっとおしいなあ」「気持ち悪いなあ」という不快感、少ない空気の中で話さなければならないストレスなどの心理的な息苦しさもありますね。

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不快感を軽減する鼻呼吸のすすめ

私はサージカルマスクをつけてウオーキング中、呼気でマスク内に水滴ができて鼻にピタっと張り付いてしまい、息がしにくくなった経験があります。その時は「私は鼻が高くないからマスクがピタッと張り付くのかもしれないなあ」などど考えて一人笑ってしまいました。が、その後に、笑い事ではないと感じ「自分にとっては、マスク着用時のウオーキングのスピードはもう少し落とした方が良い」と考え直しました。

作業量が多くなる、息が苦しくなると、たくさん空気を取り入れようとして、普段は鼻呼吸の方でも口呼吸になりがちですね。が、口から吐くより、鼻から吐いた方がマスク内の水滴が少なくなりますので、マスク着用時に鼻呼吸を維持できれば、不快感の軽減につながるのでは、と考えています。

鼻呼吸を習慣づけるための練習法

マスク着用時に鼻呼吸をする習慣をつけるための練習のヒントをご紹介し、次に休憩時のリラックス呼吸についてご紹介します。

◆鼻呼吸の練習

1.まず鼻から息を吸えるかチェックしましょう。
片鼻を軽く抑えながら、息が通るか、左右差はあるかを確認します。
ここで鼻づまりに気づいた方は、まず、自分でできる工夫をしてくみてださい。

自分でできる工夫とは、例えば私のやり方をご紹介すると、鼻を温めたり、小鼻の横のツボを押したりすると、鼻詰まりが軽減することがあります。やり方は人それぞれです。ご自分に合う方法を探してみて下さい。

このような工夫では良くならない方、長期的な鼻づまりの方は、耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。

2.鼻が詰まっていない方は、次に鼻から息を吸って口から吐く練習をします。
(話さないときは鼻から吸って鼻から吐いたほうがマスク内の湿気が少なくなるかと思いますが、話すための練習では、鼻から吸って口から吐きます)

ここで「鼻に息は通るけれど、普段、鼻から吸って吐く習慣がない」ことに気づいて驚く生徒さんもいます。簡単そうですが、やってみると難しく感じる方もいます。

3.「鼻から吸って、口から吐く」を自分のペースで繰り返します。

口が開いてしまう人は、軽くテープなどで抑えてもいいかもしれません。口を閉じると息苦しくなってしまう方は、無理をしないで、適宜口から酸素を取り入れて下さい。

鼻から息を吸うことができるようになると、呼吸するたび小鼻が膨らんだり戻ったりするのが、見てわかるようになります。レッスンでの私の個人的な経験の範囲ですが、生徒さんご本人に鏡を使ってその様子を確認していただくと、鼻から吸っていること実感される方が多いようです。

4.鼻から息を吸い、口から吐くことが習慣化できたら、吐く息をハミングにしてみてください。

こまめに、気づいたときに練習して、反復してください。

◆休憩時の呼吸

次に、マスク着用時に重要だと言われている「マスクを外しての休憩時間」を積極的に活用して、リラックス呼吸をしてみます。

1.一人になれる安全な場所でマスクをはずします。

2.手を胃か胸郭の下あたりの脇腹にあてて、鼻から吸い、口から吐きます。

3.反り腰の方は、壁に背中をつけて、腰が反らないような状態を作ってみてください。
肩が上下していないか、両手が息を吸うときに外側に押し出されている感覚があるかどうか確認してください。
無理に当てている手を押し出そうとするのではなく、力を抜いてやさしく押し出す感覚を持ってください。緊張や力みが入っていないか、気を付けてみてください。

これも私の経験の範囲内ですが、おなかを膨らまそうとすると、力みが入ってしまう方がおり、胸郭の下あたりの脇腹を両手でつかんでみる方がわかりやすいと感じています。

これができた方は、腰椎(背中の下)に手を当ててみて、息を吸ったときに膨らんでいる=当てている手が外側に押し出されているかをチェックしてもかと思います。どちらの呼吸も、うまくできたかどうかよりも、気持ちよさがあるかどうかが大事です。

休憩時間を「マスク着用による心理的なストレスを解放する」時間として、活用してください。

鼻呼吸の健康上のメリットは広く浸透していますのでここでは触れませんが、話すという観点からは、口呼吸によるブレスノイズや口腔の乾燥を防ぐほか、効率良く話せる、落ち着いて話せるなどメリットだらけです。これまで口呼吸の傾向があった方も、コロナ禍を「習慣を変えるチャンス」ととらえて試してみてください。
 


参考資料
(注1)厚生労働省「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html

 

 

 

轟美穂(とどろきみほ)

ボイスコーチ・トレーナー。主に放送の現場で話す仕事に従事した後、声優・アナウンサーなど声のプロのための訓練や、通訳者・教師・僧侶など職業上声を使う人へのコンサルティング型レッスン、および研修に携わる。2004年より京都在住。ヴォイスコネクション主宰。

 

 

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