確定申告のしくみと流れを知ろう【すぐに役立つ金融講座】

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会社員からフリーランスの通訳者翻訳者になると、仕事上だけでなく、生活面でも色々な変化があります。中でも保険や税金など、金融制度の違いや手続きには戸惑いを感じる人も多いのではないでしょうか。そこで、このシリーズではファイナンシャル・プランナーである戸田博之さんに、フリーランスのための金融知識のキホンを3回にわたって教えていただきます。3回目のテーマは「確定申告」です。

そもそも確定申告とは?

企業などで働く場合とフリーランスで働く場合に大きな違いが出るのが、税金の扱いです。企業で働いていた時は源泉徴収され、指示されるままに年末調整の必要書類を提出すれば、自動的に税金の処理が終わるというしくみだったと思います。

一方、フリーランスになり、通訳や翻訳業務を行うと、多くの場合、業務の委託先からの支払い(報酬)は源泉徴収されます。そこで、1月1日から12月31日までの1年間の所得にかかる所得税等を計算し、2~3月の申告期間内に本来支払うべき税額と源泉徴収されたものの差額を税務署に申告・納税することになります。この手続きを確定申告といいます。フリーランスになれば、この作業が必須になります。

まず、源泉徴収のしくみを知る

フリーランスに対して通訳料や翻訳料などの報酬を支払う場合、支払金額の10.21%(1回の支払いが100万円を超える場合には、その超える部分の金額は20.42%)の金額を源泉徴収することが支払側(委託先)に義務付けられています。

例として、フリーランスであるあなたが報酬10万円の仕事を受託したケースを考えてみましょう。報酬額の10.21%にあたる10,210円が所得税として源泉徴収され(差し引かれて)、89,790円の支払いを受けます。計算式にすると、下記のとおりです。

報酬-所得税=支払い(100,000円-10,210円=89,790円)

確定申告で行うこと

企業で勤める場合とフリーランスで働く場合、もう一つ大きな違いがあります。それは、企業勤めの場合、年間収入に関わる明細は、会社から発行される1枚の源泉徴収票というケースが多いのに対し、フリーランスでは、年間報酬の明細である支払調書が業務を請け負った委託先の数だけ届けられる点です。この支払調書に源泉徴収された所得税額も記載されています。

フリーランスになると、この支払調書などに基づいて確定申告することが求められます。確定申告により正しく計算された所得税の年税額が、源泉徴収された金額よりも少なければ税金が還付され、多ければ納税することになります。

では、各項目や算出方法について順に見てみましょう。

1.所得の計算

所得税法では、その収入の性質に基づき、それらを10に分類しています。
それぞれを所得と呼び、通常、事業として通訳業や翻訳業を行っている場合には、その収入は「事業所得」に分類されます。事業所得の計算方法は下記のとおりです。

収入金額-必要経費=事業所得の金額

2.必要経費の処理

事業所得を計算する際、必要経費として認められるものが多くあります。例えば事務所などを借りていればその賃貸料、さまざまな消耗品にかかる支出、光熱費や通信費、そして接待交際費などです。自宅の一部を仕事のためのスペースとして使っている場合は、家賃の一定部分を経費に含めることも可能な場合があります。経費算出のため、日頃から支払いに関わる領収証をしっかりと保管し管理するようにしましょう。

3.課税所得金額の計算

所得の種類が複数ある場合(事業所得と不動産賃貸料などの不動産所得など)にはそれを合計します。この合計額を総所得金額といいます。課税所得金額の計算は下記のとおりです。

総所得金額-所得控除=課税所得金額

 

所得控除とは、社会保険料控除やすべての人が一律で控除を受ける基礎控除など、年末調整の際にも行われている、おなじみの控除です。また、医療費控除も所得控除のひとつです。

4.所得税額の計算

課税所得金額が計算できたら、年税額を計算します。所得税法は超過累進税率となっており、所得の金額に応じて税率が異なります。年税額の計算は下記の表に当てはめて計算します。

例:課税所得金額が200万円の人の所得税額
200万円×10%(税率)-97,500円(控除額)=102,500円

 

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※参考サイト:国税庁ホームページ「所得税の税率」

5.差引納税額の計算

年税額が計算できたら、そこから税額控除を差し引きます。 税額控除の代表的なものには住宅取得等特別控除(通称:住宅ローン控除)などがあります。 そこから更に、すでに毎月の支払時に差し引かれた源泉所得税額を差引き、差引納付税額を計算します。

年税額-税額控除額-源泉所得税額=差引納税額(マイナスの場合は還付されます)

 

確定申告と言うと複雑で難しいイメージがありますが、順を追ってひとつずつ見ていくと少しわかりやすくなるのではないでしょうか。

補足:青色申告と白色申告

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、ここでは一般的な白色申告に関してご紹介しました。 青色申告は、税務署に事前に承認申請をしたうえで、毎日の個人事業の取引を複式簿記の方式で記帳し、所得申告する方法です。事業所得を計算する際に、最大65万円の特別控除が認められるため、大きな節税効果があります。さらに、事業主と生計を一にしている配偶者や親族(祖父母と15歳未満を除く子供)に支払う給与を必要経費に算入できるなどの節税メリットもあります。

その一方、事前承認に手間がかかったり、簿記の知識が必要とされたり、取引記録の管理が面倒だったりというデメリットもあります。青色申告か白色申告かを選ぶには、さまざまな考慮をする必要が出てきます。

以上、確定申告のルールを説明しましたが、ここでご紹介したものは一般的な知識です。確定申告を含むフリーランスの税務処理に関しては、専門家である税理士とよく相談してみる、会計ソフトを利用してみるなどの対策も検討してみてはいかがでしょうか。 


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戸田博之
戸田博之(とだひろゆき)

住友銀行(現三井住友銀行)国内外勤務、米国での独立業務展開を経て、米系運用会社、外資保険株式会社で金融トレーニングのプロとして活躍。同時に金融商品の選び方や社会保険と金融商品の関係など独自コンテンツを持つ講師としても講演活動を展開。現在はオフィス エイ・エイチ代表。DC(確定拠出年金)プランナー、ファイナンシャル・プランナー。

 

 

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