開発途上国への国際協力を行う「独立行政法人国際協力機構(JICA)」。そこで活躍する「研修監理員」という職種をご存知でしょうか。今回は「研修監理員」の仕事内容やその役割について、JICAのご担当者に話を伺いました。
JICA研修監理員の仕事と役割
登録言語は22言語。約900人が登録する研修監理員とは
国際協力機構(JICA)では、開発途上国から国造りの担い手となる人材(行政官や技術者など)を日本に受け入れ、研修等の実施を通じて人材育成や課題解決に向けた開発途上国の自助努力を支援する、研修員受入事業や招へいプログラムを実施しています。
これらの事業において、研修監理員には、JICA、研修員等および実施機関等の三者の間に立ち、言語を駆使しながら研修員等の研修理解を促進するとともに、進捗状況を現場で確認する役割があります。
JICAは、試験を経て登録された研修監理員の中から、研修コースごとにその特性(分野や参加国)等を勘案し、諸条件を提示して個別に業務を発注します。(委任契約)業務期間はおよそ2週間から最長で6か月程度ですが、半日から数日程度の単発的業務もあります。
JICAに登録されている言語は英語、ポルトガル語、ミャンマー語など22言語あり、約900人が登録されています。
業務内容について
講義や視察、ディスカッション等の研修の通訳が主な業務ですが、講義内容の理解促進やディスカッションの充実を図るファシリテーションも業務の一つです。その他、研修の講師や視察先との連絡調整の役割を担います。研修監理員には、通訳力に加えて調整力が求められます。
業務の意義
開発途上国からJICAの研修に参加する人材を研修員と呼びますが、彼らはそれぞれの国の未来と発展を支える人材です。JICAの研修は、彼らが日本で得た知識と経験を母国の発展と課題解決に役立てることが狙いです。また、研修員の方々に、来日の機会を通じて知日派・親日派となって活躍してもらうこともJICAの研修の重要な目的の一つです。
研修監理員に業務について尋ねると一様に「いろいろな国の人と交流が楽しい」「研修員と関わることが楽しい」と話してくれます。また、研修員の帰国時のインタビューでよく聞くのは「時間に正確である」「礼儀作法を学んだ」などの気づきです。その気づきを与えてくれたのは「研修監理員のおかげ」とコメントします。インタビューの多くは、知日派・親日派が増えたことが分かる場となり、研修員が日本滞在で得た気づきを話してくれます。その気づきを与える役割が研修監理員にあります。
登録から業務受諾まで
研修監理員になるためには、JICAが実施する登録試験に合格しなければなりません。新規登録の募集言語は、JICAの事業展開の方向性、言語のニーズ、研修監理員の充足状況をふまえて判断します。そのため登録22言語の内の限られた数言語のみ募集対象とする年もあれば、言語によっては複数年続けて募集する年もあります。
試験は、第1次選考(書類審査)、第2次選考(通訳試験)、第3次選考(面接試験)の3段階まで行われます。応募には、語学力の目安や、当該言語の通訳の実務経験3年以上などの条件があります。語学力については、例えば英語では、TOEIC900点以上、ポルトガル語では、ポルトガル語検定上級などです。国籍は問いませんが、外国籍の方は委任契約を結ぶ前に就労ビザを取得していなければなりません。
第3次選考を通過しますと、JICAの研修監理員として登録されます。登録された研修監理員はJICAとの委任契約を締結し、業務依頼に基づいて業務を実施します。委任期間は2週間から最長で6か月程度で研修期間によってそれぞれですが、概ね1カ月程度です。
この記事が、研修監理員の業務に関心をもっていただくきっかけとなれば幸いです。
JICA(ジャイカ)は開発途上国への国際協力を通じて、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う実施機関です。日本政府の開発協力大綱の下、人間の安全保障と質の高い成長の実現を目指しています。
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