サイマルの翻訳――これまでのあゆみと今後の展望――

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通訳の印象が強いサイマルですが、翻訳サービスも充実していることはご存じですか。今回は、そんなサイマルの翻訳事業について翻訳事業部ジェネラルマネジャーの中島智美さんにお話を聞きました。

サイマルの通訳と翻訳

――中島さんは翻訳事業部の前は通訳事業部の所属だったそうですが、異動してみて通訳事業と翻訳事業の印象の違いなどはありましたか?

中島(以下、中):そうですね。通訳事業の場合、サービスのクオリティという面では通訳者のパフォーマンスによるところが大きいので、私たちの仕事は通訳者が現場で100%の力を発揮できるよう最大限サポートをすることです。一方翻訳は、翻訳者がいて、チェッカーがいて、最後にコーディネーターが最終版に仕上げて納品します。私たちが最終成果物にかなりコミットするわけです。お客様の窓口である翻訳コーディネーターが、お客様にお届けするサービスのクオリティに大きくかかわる、製作部隊の一員だと思います。

とはいえ変わらないところも、もちろんあります。それはお客様への対応や、通訳者翻訳者の方々とのコミュニケーションが大事という点です。お客様が何を求めていらっしゃるかというニーズをしっかり把握して、担当する通訳者翻訳者と協働してサービスを提供していくところは通訳・翻訳業務どちらも共通しています。

翻訳サービスのはじまりと現在

――そこは通訳・翻訳会社として柱になる部分ということですね。ところで、サイマルは2020年で55周年ですが、翻訳サービスはいつごろからあったのでしょうか?

:私が入社するずいぶん前の話ですが、もともと通訳の付加サービスとして始まったと聞いています。創業初期から翻訳サービスも始まっていたようです。

――通訳をご依頼くださったお客様から「これの翻訳もお願いできる?」というようなご要望があったということでしょうか。

:そうだと思います。今でも同じですが、通訳が必要とされる会議では必ずと言っていいほど資料の翻訳が必要になります。

――その翻訳サービスですが、現在プレミアム、スタンダード、ファストという3つのサービスラインがあります。その特長を教えてください。

:はい。もともとは、今でいうプレミアムというサービスラインだけでした。今よりも見積もり競争などが激しくない時代でしたので、良いものを仕上げるために、時間もお金もかけていただける時代でした。それがリーマンショックもあり、お客様のコスト管理が厳しくなり、価格競争も激しくなってきたという流れがあります。そのころから、コストを抑えて納期も短縮したサービスラインを作りました。それが現在のスタンダードサービスの前身になるのですが、これは急速に拡大しました。

時代はさらに低コスト、高スピードを指向していましたので、そのお客様ニーズにお応えできるよう、変化が求められました。また、業界としては特に製薬会社のグローバル化が進み、今までサイマルでは扱っていなかったメディカルの翻訳市場が急拡大してきました。

そこで始まったのがファストとメディカル専門の翻訳サービスです。この2サービスに関しては、サイマルにとって新しい分野へのチャレンジですので、新しくリンク・トランスサイマルという子会社を作りました。それにより今までと違うマーケットへリーチすることを考えていたのですが、実際には通訳でお取引いただいているお客様や、これまでもサイマルの翻訳を使ってくださっていたお客様からのお問い合わせ、ご依頼も多くいただき拡大していきました。

そのような中、別会社ではなく、サイマル・インターナショナルでまとめてご提案したほうがお客様にとって便利で、社内の対応も効率的になるということで、2018年にリンク・トランスサイマルをサイマル・インターナショナルに統合しました。これにより、一人のコーディネーターがお客様のニーズに沿って幅広い品質、価格帯のサービスをご提案できるようになりました。

コーディネーションの特長

――お客様のニーズを把握し、翻訳者に伝える存在としてコーディネーターがいますが、サイマルのコーディネーターの特長はなんでしょう。

:コーディネーターの仕事としては、どの翻訳会社さんも同じなのだと思います。その中で、サイマルの翻訳コーディネーターの特長を考えると、信頼と高品質のサイマル・ブランドを重要なものと認識している、という点が大きいと思います。お客様からのお問い合わせを一つ一つ誠実に、時には難しいご相談をいただくこともありますが、さまざまに工夫してご提案しています。コーディネーターひとりひとりがサイマル・ブランドであると感じています。

――お客様からコーディネーターへのフィードバックなどありますか?

:ありたがいことに、お客様からお褒めやお礼の言葉をよくいただきます。また、私たちも、つねに自分たちが「お客様に何と言っていただきたいか」を考えるようにしています。私たちは「期待以上だった」という評価をいただきたいので「これくらいでいいかな」と妥協せず、精一杯を心がけています。お客様のご依頼には必ずと言っていいほど時間や予算の制限がありますが、その中でのベストをご提案させていただくようにしています。お客様との目線あわせを大切にし、お客様、コーディネーター、翻訳者の全員でチームとして仕上げていくのです。

――お客様もチームの一員なのですね。

:はい、お客様の協力は不可欠なのです。お客様と翻訳者との間のコミュニケーション、信頼関係が大変重要ですね。

――では、翻訳者登録についてはいかがでしょうか。


:翻訳事業が急拡大していますので、常に翻訳者は募集しています。特にニーズが拡大している業種、分野へは集中したリクルーティングをしています。各分野で、より高い専門性が求められていますので、試訳も分野ごとに準備し、採用後にお仕事をお願いしやすいように登録面談では、ご実績等をかなり詳しく聞かせていただいています。

――翻訳者には専門性が求められていくのですね。

:まずは基本的な翻訳スキルがあることが大切です。その上で専門分野の知識があると強いです。そしてチームとして仕事を進める上ではレスポンスの早い方、またこれからは翻訳支援ツールを使う仕事が増えていきますので、ぜひ皆さんに使えるようになっていただきたいです。

――登録後のフォローなどはありますでしょうか。

:毎月登録者情報を確認し、新規ご登録の方へお仕事の依頼ができるような仕組みを作っています。また、必要に応じてフィードバックをしながら、サイマルの仕事に慣れていっていただけるよう、採用管理チームと一緒にサポートしています。

一例ですが、テーマを決めてワークショップのご案内をしています。オンラインで見ていただけるものを作って、遠隔地にお住いの方にも視聴してもらっています。品質管理の担当者から定期的に情報発信もしています。前回は「直訳と意訳」というテーマでしたが、ご登録者の方々からの反応もかなりありました。

また、以前は『翻訳ブログ』という形で、お客様にサイマルの翻訳に取り組む姿勢や、翻訳についての理解を深めていただけるような内容の情報発信もしていました。

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――『翻訳ブログ』から『通訳・翻訳ブック』に転載した記事は、メニューに関する翻訳をはじめ、今も大変人気がありますね。

:そうですね、標識や掲示などのサイン和食のメニューの英訳などは機械翻訳では難しいですよね。文化や背景、それを読む対象者などを盛り込んでの翻訳ですから、単語の置き換えだけではできません。『翻訳ブログ』は、アカデミックな内容とやわらかい内容、硬軟織り交ぜて、と工夫していました。当時はコーディネーションをしながらブログのアップデートをしていましたので本当に大変だったのですが、今は『通訳・翻訳ブック』で定期的に発信できているので良かったと思います。

これから増えていく分野

――今後に関してですが、サイマルの翻訳の中でこれから伸びる分野は、ずばりなんでしょうか。

ディスクロージャーは増えていくでしょう。このコロナ禍でもご依頼が減ることはありませんでした。今年4月から株式会社TAKARA & COMPANYの一員になったということも大きいですが、以前からディスクロージャー翻訳のニーズは多くありましたし、これからも英文開示率は増えていくと思います。

また、医薬も伸びていくと思います。このような分野では常にニーズがありますので、翻訳者、営業、コーディネーターのそれぞれで体制を整えていきたいと思っています。 

2021年以降の展望

――そのような見通しのなかで、2021年以降の展望をお聞かせください。

:10年前と比べて翻訳の事業規模は3倍になっています。事業部もサービスもコンパクトな時代から、コーディネーターをはじめとする社内メンバーが増え、案件数が増え、ご登録いただいている翻訳者の方々も増え続ける中で、専門対応チーム化への変革期だととらえています。常に変化し続ける組織の中にいるメンバーも大変だと思いますが、サイマルの強みをもって、より多くのお客様にご案内させてもらいたいと考えています。サイマルの強みとは、高品質のプレミアムというラインを持っているところ。「高品質」とは何か、という評価軸をもっていることが大切なのだと考えています。

――核となるのは、プレミアムですか。

:プレミアムはサイマルのフラッグシップサービスですが、お客様のご要望、納期優先なのか、価格優先なのか……それぞれのご依頼の状況をしっかり把握して最善の対応をする。訳文の品質だけではなく、コーディネーションを含めての高品質を提供し続けたいと考えています。「通訳のサイマルが翻訳もやっているんですね」と言われることがまだあるのですが、近い将来「通訳と翻訳のサイマル」といってもらえるようになると確信しています。

レイアウトが1ミリずれているなど、見た目で崩れていると「中身もダメなのでは」と思われたりする……翻訳サービスとは、文字を置き換えするだけではないですよね。そういう細かい部分まで配慮した、満足度の高いサービスを提供していきたい。より多くのお客様や翻訳者の皆さんに「サイマルと仕事をしてよかった」と言っていただけるよう、がんばります。

 



写真/構成:通訳・翻訳ブック編集部



 

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