パソコン、スマホ……VDTから目を守るには【すぐに役立つ健康講座】

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日々多忙で、心身ともにハードな業務をこなす通訳者翻訳者にとって、健康管理は大事な仕事のひとつです。仕事はもちろん、快適な日常生活を送るため、健康な体づくりをめざしましょう。今回は、デジタルデバイスが目にもたらす弊害とその予防策について、国際医療福祉大学の原直人先生にお話を伺いました。

VDT症候群。別名IT眼症とは?

皆さんは「VDT症候群」をご存じでしょうか。

パソコンや携帯電話、スマートフォン(以下、スマホ)、電子辞書に電子書籍、ポータブルゲームなど、私たちの周りにはVDT(Visual Display Terminal)があふれています。仕事はもちろん、日常生活でも欠かせない便利なツールですが、このVDTを使った長時間の作業により、目をはじめ、体全体や心にもさまざまな影響を与えるのが、VDT症候群、別名IT眼症という病気です。パソコンの普及とともに増加し、現在は大きな社会問題となっています。

VDT症候群のさまざまな症状

VDT症候群には主に下記のような症状があります。

◆目の症状

目が乾く、目が痛む、ぼやける、頭が痛くなるなど。悪化すると眼精疲労(目の病的な疲労)に発展することも。

◆体の症状

首や肩がこる、背中がだるい、肩から腕が痛む、足や腰がだるくなるなど。慢性化すると背中が痛んだり、手足がしびれるなどの症状が出ることも。

◆心や神経の症状

めまいがする、だるい、食欲不振(過食)になる、イライラする、不安になるなど。ひどくなると抑うつ状態になる場合も。

程度の軽重はあっても、多くの人が悩まされたり、現在悩んでいる症状ではないでしょうか。このような症状が続けば、仕事の効率を下げるばかりか、日常生活にも多大な支障をきたすことにもなりかねません。

VDT作業がもたらす脳への影響

VDT作業を続けていると、先述したようなさまざまな症状や疲労を感じる人が多いと思います。この最大の原因はディスプレイ作業にあり、脳の疲労が大きく関係しています。

そもそも、見るという作業は、目だけでなく脳の働きによるものです。目から得た画像情報が脳に伝達されることで、私たちは見えていると感じるのです。そして、ディスプレイ作業では、いくつかの「画面を見る」際の要因によって、脳に様々なストレスが与えられることになるのです。

第一の要因は、画面と目の距離が極めて近くなったことから「近見反応」が酷使されていることです。人には、近くを見る場合、近くに焦点が合うよう調節する機能があります。このピント調節は脳に非常に大きな負荷をかける作業です。また、紙の資料を読むときは、見る範囲が大きいため、視線を動かすという作業が生じますが、画面を見続ける場合は、大きな視線の動きがなくずっと同じ寄り目(輻輳・ふくそう)の角度を保ち続けて見ることになります。スマホを始めとして画面が小型化したため、目と画面の距離が近くなり、その分、脳への負荷もさらに大きく深刻なものとなっているのです。

次の要因は、画面を長時間凝視することにより、脳が莫大なエネルギーを使うことになるためです。これにより、やはり近見反応が酷使され、大きな疲労をもたらすのです。

そして、画面の過度な明るさも大きな要因のひとつです。脳は輝度(明るさの度合い)が高いほど反応し、刺激を受けて疲労を起こします。さらにブルーライトの弊害も無視できません。ブルーライトは自然光にも含まれており、それ自体が有害なものではありません。しかし、スマホやタブレットなど至近距離で見ることの多い液晶画面から発せられる場合、人体、目に大きなダメージを与えると言われています。また、このブルーライトは頭痛を引き起こしやすいため、片頭痛の人には特に悪影響を及ぼすことがあります。

目に何らかの症状が出た場合、目や眼球そのものは心配しても、脳の心配をする人は少ないのではないでしょうか。しかし、実は脳への影響は深刻な問題で、無視するわけにはいきません。VDT症候群の症状を放置せず、しっかりと対処するようにしましょう。

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パソコンやスマホと上手に付き合うためには

VDTの使用に弊害が多いとは言え、仕事上、使用しないということはまず難しいのではないかと思います。そこで、上手な付き合い方を知って、日頃から意識するようにしましょう。

1.休憩をとる

VDT作業が1時間を超えたら10~15分程度の休憩をとる、というのが最も理想的です。ですが実際、日々の仕事でこれを実行するのはなかなか難しいですよね。

その場合は、取り入れやすい「20-20-20」ルールを実践してみてください。これはアメリカ検眼協会(AOA)が作成した習慣で「20分作業をしたら、20秒間、20フィート(約6メートル)遠くを見る」というものです。VDT症候群を防ぐには最も効果的で実行しやすい対策のひとつです。

2.適切な眼鏡を使用する

眼科医としては、ぜひ一度眼科に行って自分の目の状態をチェックすることをお勧めします。極度の眼精疲労を訴える人が検査をしたところ、実は隠れ斜視だったと判明した例もあります。まずは自分の目について知るということが大切です。そして近眼なら近眼、老眼ならパソコンの距離用に調節した、自分の状態にしっかり合った眼鏡を作り、適切な屈折矯正を行いましょう。

3.画面を離し、輝度を低めに調整する

デスクトップパソコンであれば50センチ、スマホであれば30センチ以上の距離を取るようにしましょう。また、画面は明るすぎないように輝度を調整することが大事です。

健康な目のために日頃から気を付けるべきこと

健康な目の状態を保つためには、日々の疲労をためないことが大切です。そのためにはストレスを解消し、心身ともにリラックスすることが欠かせません。

手軽でおすすめなのは目の周りを温めることです。気持ち良いと感じることで、心身ともにほぐれ、疲労解消にもつながります。蒸気のホットアイマスクなど、色々なグッズも市販されているので、上手に活用してみてはいかがでしょうか。

また、よく目に良いと言われるブルーベリー、アスタキサンチンなどのサプリメントも試してみる価値ありです。どちらも疲労予防効果があると言われていますので、即効性を求めると言うより、長期的な効果を期待して摂取すると良いでしょう。

ぜひVDTとうまく付き合いながら、目を大切に過ごしてください。




木下先生
原直人(はらなおと)

北里大学医学部卒業後、ジョンズ・ホプキンス大学医学部神経内科学留学、神奈川歯科大学眼科教授などを経て、現在は国際医療福祉大学保健医療学部視機能療法学科教授。デジタルデバイスの普及により増加する眼の疲労軽減をライフワークとし、日々、学生の指導と患者の診療にあたっている。