独立行政法人国際交流基金(JF)をご存じですか。人と人、国と国が相互理解を深めていくため、50年以上に渡って活動を続けている日本唯一の専門機関です。今回は、そんな国際交流基金について、役割やめざすもの、国際交流における「正しく伝える」ことの大切さ、通訳・翻訳へのメッセージなどを伺いました。
国際交流基金の役割
――国際交流基金とはどのような機関なのでしょう。基金のめざすものや事業内容などを簡単にご紹介いただけますでしょうか。
国際交流基金(以下、JF):はい。独立行政法人 国際交流基金(The Japan Foundation、以下JF)は、世界の全地域において、総合的に国際文化交流事業を実施する日本で唯一の専門機関です。1972年に外務省所管の特殊法人として設立され、2003年10月1日に独立行政法人となりました。
「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ」をミッションに掲げ、「文化」「言語」「対話」を通じて世界の人々と日本の人々の間の相互理解を深めるべく、活動しています。
海外に25か国・26の拠点を持ち、設立以来、展覧会や国際シンポジウム等の催しの開催、日本語教材開発や日本語能力試験の実施、専門家や芸術家の派遣・招聘など、さまざまな企画や情報提供を通し、人々の間に共感や信頼、好意を育み続けています。
【動画】30秒で国際交流基金をご紹介
50周年の節目を迎えた国際交流基金賞
――日本で唯一の機関なのですか。ところで基金では、国際交流基金賞という賞を設け、受賞記念講演などもされていますね。これはどのような賞なのでしょうか。
JF:本賞は、学術、芸術その他の文化活動を通じて、国際相互理解の増進や国際友好親善の促進に特に顕著な貢献があり、引き続き活動が期待される個人または団体を顕彰する目的で設立されました。JF設立翌年の1973年のことで、2023年に50周年を迎えました。現在JFのサイトでは、これを記念した特別ページを設け、過去の受賞者の方々から、50周年目に際して寄せられたメッセージを紹介しています。
ぜひ多くの方にご覧いただき、あらためて国際文化交流の意義とその魅力を感じていただければと思っています。
【50周年記念 受賞者からのメッセージ】
サイマルは民間企業初の受賞
――同賞ですが、歴代の受賞者を見ると、個人では村上春樹さんや平山郁夫さん、団体では国内外の大学・機関など、非常に多彩な顔触れだなと感じます。大変ありがたいことに、1977年にはサイマル・インターナショナルも国際交流奨励賞を授与いただきましたが、これはどのような理由からだったのでしょうか。
JF:サイマルさんは、設立以来、同時通訳および国際会議運営を主たる事業として、日本と諸外国との間の意思疎通、知識の交流にきわめて大きく寄与され、語学の面でハンディ・キャップを負っている日本人の国際場裡での活動に不可欠とも言える存在として、その活動が注目されてきました。また、日本における同時通訳のパイオニアとして優れた通訳者の養成にも努力されており、今後も諸外国との国際交流の促進に大きく貢献することが期待される点、更に、関連会社のサイマル出版会(注)のユニークな出版・翻訳活動を通して、日本と諸外国との文化・学術面での交流にも優れた功績をあげている点が当時評価され、授賞となりました。
ちなみに民間企業では、サイマルさんが初となります。
国際交流における「伝える」ことの大切さ
常に意識を向けていること
――そうだったんですか。ところで基金の活動では、言葉や文化を超えて「伝える」「発信する」場面が非常に多いかと思います。そのような場面において、特に意識されたり気を付けていらっしゃるのはどのようなことでしょうか。
JF:JFがいかに世界各国で国際文化交流を実践したとしても、その交流相手にJFの意図が伝わらなければ、事業を行う意味を成さなくなります。そのため、難しいことではありますが、我々が伝えたい、発信したいと考えている物事の本質が、様々なバックグラウンドを持つ受け取り手に確実に伝わるかどうかということに、常に意識を向けています。
通訳・翻訳サービスの果たす役割
――サイマルを含め民間の通訳・翻訳サービスを利用される際に大切にされていることや、期待されることなどをお聞かせください。
JF:通訳・翻訳サービスにおいては、高い語学力に加えて、話者・筆者の伝えたいことを十分に把握した上で、それを的確な表現で聴き手や読み手に伝えていただく必要があります。そのため、コミュニケーション能力も含め、とても高度な能力が求められているかと思います。また、そうした表現は、日ごろから培われている幅広い語学への知識はもちろん、専門用語や固有名詞を含めた各専門分野の知識、幅広い一般教養などに裏打ちされたものであるのかと思います。JFでは、そういったプロの力をお借りすることで、思いや意図を確実に伝えたいと考えています。
今後の展開と通訳者・翻訳者へのメッセージ
――最後になりますが、今後の活動予定や展望などをお聞かせいただけますでしょうか。また、通訳・翻訳に関わる企業や通訳者・翻訳者へ伝えたいことがありましたら、あわせてぜひお願いします。
JF:2023年、JFにとって26か所目の海外事務所となるリマ日本文化センター(ペルー)を開設しました。今後もJFのミッションである「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ」を実現すべく、世界各地で積極的に活動してまいります。
通訳・翻訳をしてくださる皆さまは「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ」をミッションとして掲げて事業を実施しているJFにとって、言語の壁を取り払い、相互理解を促進してくださるとても大切な存在です。また、JFの事業のみならず、国際化が急速に進む現代社会において、通訳・翻訳はなくてはならない業界であります。今後も業界全体が益々ご発展されることをお祈りしています。
注:1967~1998年。サイマル・インターナショナルの関連会社として、異文化、言語、国際理解などの書籍を多数刊行した。
総合的に国際文化交流を実施する日本で唯一の公的専門機関。文化・言語・対話の3分野を中心に、多様な文化交流事業を企画・立案・実施し、日本と世界の人々の間に共感や信頼、好感を育み続けるべく、世界中で事業を展開している。
公式サイト:https://www.jpf.go.jp/
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