「大文字」か「小文字」か――。母国語が英語の方とそうでない方は、読んだときにそれぞれどのような印象を受けるのでしょうか。翻訳者の田代眞理さんが、会社名の表記を例に解説し、そこに着目する重要性についてお話しします。
今回はまずこちらの文章から。内容、というよりも見た目に注目してご覧ください。
Today, half a century since our establishment, SIMUL INTERNATIONAL has transformed from an interpreting company into a global communications company. In response to the diversification of client needs, SIMUL INTERNATIONAL now offers personnel dispatching, job placement, conference organizing, and language training services in addition to interpreting and translation services.
いかがでしょう。どんな印象を受けますか? 日本では、このように英語の会社名をすべて大文字で表記(「all caps(オールキャップス)」とも言います)するのをとてもよく見ます。実際私たちの仕事でも、社名はいつも大文字表記で、と指定されることがあります。
ですが、こうした社名の大文字表記、表紙や見出しなどで単独で出てくる場合は問題ないのですが、文章中にこのように出てくると(略称が社名の場合は除きます)英語としてとても不自然な見た目になります。
英語では、文章の中に大文字だけで組んだ単語が出てくると、そこだけ飛び出て見え、何か叫んだり怒鳴ったりしているような印象を読む人に与えます。また視線がそこに行きがちになることで、本来そこで伝えるべき内容が頭に入りにくくなってしまうこともあるのです。
ちなみに、サイマルはロゴでは「SIMUL」と大文字で表記していますが、本文中では「Simul」と単語の頭文字だけを大文字にしています。英語ではこれが一般的なスタイルです。
「うちの会社は定款で大文字表記と決まっているから、社名はいつでもどこでも大文字表記でないとダメ」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、たとえば日本の有価証券報告書にあたるアメリカの年次報告書「Form 10-K」では、表紙では定款に従った表記ということで社名が大文字で書いてあっても、本文中では大文字と小文字で組んだ標準表記になっています。
英語では読みやすさを考え、出てくる場所に応じて表記を変える方が自然です。
では先ほどの英文、日本語で再現するとしたらどうなるか、試しにやってみましょう。
創業から半世紀、サイマル・インターナショナルはいま「通訳のサイマル」から「グローバルコミュニケーションのサイマル」へ。さまざまなお客様のニーズの広がりに対応して、通訳・翻訳・人材派遣/紹介・国際会議運営・語学研修などのサービスを提供すると同時に、常に新たなコミュニケーションサービスの可能性を追求し続けています。
いかがでしょうか。「サイマル」「サイマル」と連呼されて、ちょっとうるさく感じませんか?
会社名を目立たせたいという気持ちはわかります。でも、それはロゴや広告で十分果たせるのではないでしょうか。自分たちの伝えたいメッセージが読者にしっかり違和感なく届くには、やはり自然な見た目が一番なのです。
(注)この記事は、2014年7月に「サイマル翻訳ブログ」に掲載されたものです。
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