通訳・翻訳業界で働くサイマルのスタッフがお届けする「サイマル通信」。エージェントの視点で、業界にまつわる話題や、スタッフの仕事など、好奇心をくすぐる話題をあれこれご提供します。今回は、翻訳コーディネーターが、あるサインの訳し方についてご紹介します。
こんにちは。翻訳コーディネーターのE.A.です。
さて、翻訳というと、どのようなものを想像しますか? 本や映画字幕などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
主に産業翻訳を行うサイマルでは、日頃、国際会議でのスピーチ原稿やイントラネットに掲載される社内報など、様々な文書のご依頼をいただきます。
中にはこのようなご依頼も……。
「どんなトイレでしょうか?」
家から一歩外に出ると、たくさんの案内表示を目にします。駅の「出口」やデパートの「エレベーター」、交差点の名前にいたるまで。「サイン」「標識」などと呼ばれるこれらですが、今では日本語だけでなく、英語や中国語などが併記されているものも多く見かけるようになりました。
その表すものを簡潔な言葉で明確に伝えるのが、サインの役目です。じっくり意味を考えたり説明を読んだりしなければ理解できないものでは、サインとして今一つ。そのため、短い言葉で分かりやすく書かれているのですが、いざそれを翻訳しようとなると、短いからこその悩みや疑問が出てきます。
例えば、デパートでよく目にする「化粧室」。その「化粧室」の個室は1つなのか、複数なのか。いわゆるトイレだけなのか、洗面台が付いているのか。女性用だけなのか、男性用もあるのか。「toilet」としたり「restroom」としたり、単数にしたり複数にしたりなどなど……。意外にも様々な影響があります。
そのため「どんなトイレでしょうか?」とクライアントにお尋ねするのですが、「普通のトイレです」と、なぜそんなことを気にするのか疑問に思われることが、ままあります。事情を説明すると納得してくださり、実際のサインが貼ってある場所の写真を送ってくださることも。本当にありがたい限りです。
短い言葉の中にたくさんの方の協力が詰まっているサイン。今日あなたが目にするサインもそうして生まれたのかもしれないと思うと、なんだか楽しくなりませんか。
翻訳コーディネーター E.A.
(注)この記事は2016年2月「サイマル翻訳ブログ」に掲載されたものです。
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