正しい発音を知る【英語発音上達のコツ】

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レベルやキャリアを問わず、関心の高い「英語の発音」。英語音声学や発音指導のプロである青山学院大学准教授の米山明日香さんが、その上達のコツを詳しく解説します。全12回のシリーズ、今回がいよいよ最終回です。米山さんがあらためて伝えたいことをテーマにお届けします。

重要なのは「上手な発音」ではなく「正しい発音」

今回でこの連載の最終回を迎えます。本連載では「上手な発音」ではなく「正しい発音の重要性」について言及してきました。ここであらためて、その点について強調したいと思います。

発音は可視化できないものですから、学習の際には困難が伴います。この点が、英語の文法を学ぶ、読解を学ぶ、語彙を学ぶといった可視化されうるものとは一線を画するのです。程度の差こそありますが、一般的に可視化できるものの方が、学習は複雑ではありません。

このように、発音は「目に見えない」ことから「上手」とか「下手」といった印象で捉えられる傾向にあります。しかし、このような観点で発音を捉えると、どうしても「うまく聞こえるように発音する」とか「かっこよく聞こえるように発音する」といった、本来の「正しく発音する」という概念から大きくかけ離れた印象論で良し悪しの判断を行い、学習してしまうのです。

これでは、本当の意味で発音を向上させることはできません。また、困ったことに「うまく聞こえるように発音する」「かっこよく聞こえるように発音する」ことを習慣としていると、自分では「発音がうまい」と思っているため、実際には発音向上はほとんど見込めないのです。その意味で、発音が正しくできているか、発音上の悪癖はないかを専門家にチェックしてもらう機会を定期的に持つことは有意義です。

では、正しく発音する際にはどういった点に気を配ればよいでしょうか。何より重要なのは、発音を正しく表記している書物を使って、正しい発音を調べることです。最近では、電子辞書やオンライン上で発音が聞けるサービスがあります。筆者も時々利用しますので、これは確かに大変便利です。

しかし、弊害があることも忘れてはいけません。すでに発音がかなり熟達した人が確認のために使用する分には構わないのですが、そうでない場合、音を聞いて正確に認識ができないため「ざっくりとした」発音を聞くことになります。そうした発音では「ざっくりとした」発音を生成することにつながり、結果として正確な発音には結びつかないのです。

この「ざっくりとした」というのは、日本語を母(国)語としている人や英語に熟達していない人の場合、英語で聞いた音が日本語に存在しないなじみのない音だと、日本語に存在する音や日本語に近い音で代替して聞き取るという性質があるということです。

たとえば「lyric」 という単語を聞き、この単語の意味やつづりを知らない場合、日本語には /l/ と /r/ の相違が存在しないため、ly は「リ」と、ri は「リ」と聴解してしまうので、結果として両方が同じ音であると捉えてしまうのです。この調子では、正確に音を再生することはできないのです。

正確な発音を学習する際におすすめしたいのが、音声学の大家 J. C. Wells 氏の著した Longman Pronunciation Dictionaryです。これは英国人の著者がイギリスの出版社から出版している辞書ですので、最初に「標準イギリス英語」、後者に「標準アメリカ英語」が発音記号で書かれているという特徴があります。加えてCD-ROMが付属されているので、標準イギリス英語と標準アメリカ英語を実際に聞いて確認することができます。

発音記号を読めなくては使いこなせませんので、発音記号の習得もお忘れなきように。発音記号が読めることは、発音を向上するうえでのメリットになります。発音記号の学習はそれほど時間はかかりませんので、発音記号が読めない方は一度、専門書や辞典などで一通り学習することをすすめます。Longman Pronunciation Dictionaryでも発音記号一覧がありますので、こちらを利用してもよいでしょう。

英語を生業としている方には、こうした発音辞典を1冊ご用意いただくと、全般的な英語力向上につながります。

本連載が、皆様の発音向上に役立っていれば幸いです。



※この記事は2013~2014年にCAISウェブサイト内『通訳情報ステーション』に掲載されたものです。 

米山明日香(よねやまあすか)

青山学院大学社会情報学部准教授博士(文学)。専門は英語音声学、英語教育、発音指導、英語プレゼンテーションなど。大学卒業後、英国University College Londonに留学し、音声学修士号(MA in Phonetics)を取得後、日系航空会社勤務、通訳者、大学講師などを経て現職。2022年春NHKラジオ番組「ニュースで学ぶ『現代英語』」出演。公式ブログ:http://blog.livedoor.jp/bihatsuon/

 

 

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