アメリカ英語とイギリス英語――翻訳の仕事で覚えた相違点

f:id:simulmm2019:20210217173403j:plain

聞けばわかるイギリス英語とアメリカ英語の違いも、読むときはさらっと読み過ごしてしまっているかもしれません。長年、英語ネイティブ翻訳者として活躍するカースティン・ソーニさんが実務経験で学んだ違いの数々を解説します。

日本国内で発注される日英翻訳は、ほとんどの場合、アメリカ英語の訳文が求められています。サイマルでも、クライアントから特に指示がなければ、アメリカ英語の訳文を作成することが基本です。

私は翻訳者として和文の英訳を担当していますが、出身はイギリスであり、25年以上前に日本で和文の英訳をし始めたころは、アメリカ英語で書く経験がありませんでした。そのため、仕事のためにイギリス英語とアメリカ英語の違いを調べて、覚える必要がありました。そこで今回は、その過程で覚えた相違点の一部をご紹介します。これ以外にも違いは数多くありますが、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

この記事では、アメリカ英語とイギリス英語の違いをスペル、句読法、文法の3つに分類し、それぞれの例を挙げます。当然、現代社会のグローバル化も影響し、アメリカ英語とイギリス英語の使い分けが、かつてほどはっきりしてはいないのですが、一般原則としては下記のような相違点がいまだに存在しています。

スペル

基本的なスペルの相違点は、皆様にもなじみがあるかと思います(organize/organise、color/colour、 center/centre等)。しかし、次のような違いもご存じでしょうか。

例:
  • toward, forward(米)/ towards, forwards(英)
  • traveler, traveled, traveling(米)/ traveller, travelled, travelling (英)
  • skeptical(米)/ sceptical (英)
  • judgment (米)/ judgement (英)

句読法

引用符を使う場合、ピリオドやカンマの位置は、アメリカ英語では引用符内「“like this,”」、イギリス英語では引用符外「“like this”,」というルールがあります。このルールもすでにご存じかもしれませんが、下記の違いはいかがでしょうか。

1. シリアルカンマ*の使用

アメリカ英語ではシリアルカンマの使用が一般的であるに対し、イギリス英語ではシリアルカンマを使わない方が多いです。

例:
The product was sold in France, Germany, and Belgium. (米)
The product was sold in France, Germany and Belgium. (英)

*シリアルカンマ: 三つ以上の項目が並ぶ際、最後に付けられる接続詞(“and” か“or”) の前のカンマ

2.ダッシュの使い方

括弧の代わりに使ったダッシュの使い方も違います。アメリカ英語ではスペースなしの全角ダッシュ(em dash)が一般的ですが、イギリス英語ではスペース入りの半角ダッシュ(en dash)をよく見かけます。

例:
These technologies—and the ability to apply them—are our greatest assets.(米)
These technologies – and the ability to apply them – are our greatest assets. (英)

3.敬称のピリオド

イギリス英語では敬称にピリオドを付けないことが多いです。

例:
Mr. Jones, Ms. Ali, and Dr. Sato (米)
Mr Jones, Ms Ali and Dr Sato (英)

文法

文法の違いはそれほど多くないのですが、下記の3点が挙げられます。

1.制限用法の“that/which”

名詞句の意味を制限する従属節(“restrictive clause”)の場合、アメリカ英語では“that”、イギリス英語では“which”が使われます。 

例:
The products that we sell in Indonesia are manufactured there.(米)
The products which we sell in Indonesia are manufactured there. (英)

2.集合名詞の扱い

集合名詞は、アメリカ英語では単数扱いが一般的ですが、イギリス英語では複数扱いが多いです(例外もあります)。

例:
The staff(又はgovernment、 team等)is doing a good job. (米)
The staff(又はgovernment、 team等)are doing a good job. (英)

3.現在完了形の使用

イギリス英語では、過去の動作が現在でも影響がある場合、動詞の現在完了形(“have/has” + 過去分詞)が使われますが、アメリカ英語ではただの過去形が一般的です。

例:
We achieved record sales this fiscal year. (米)
We have achieved record sales this fiscal year. (英)

特に、“just” “already” “yet”等の副詞の場合、イギリス英語では現在完了形が正しいのですが、アメリカ英語では過去形がよく使われます。

例:
He just became CEO. (米)
He has just become CEO. (英)

Two new offices already opened in China. (米)
Two new offices have already opened in China. (英)

We didn’t achieve our target yet. (米)
We haven’t achieved our target yet. (英)

 

以上、アメリカ英語とイギリス英語の違いを一部紹介しました。翻訳者の皆様はイギリス英語の訳文を作成する頻度は多くはないでしょうが、アメリカ英語になっているはずの訳文に思わずイギリス英語を混在させないよう、基本的な違いを覚えておくことは大切だと思います。



f:id:simulmm2019:20210216145122j:plain

Kirstin Soni(カースティン・ソーニ)

Kirstin Soni, a British national, has over 25 years’ experience of translating Japanese to English. After completing a Japanese degree in the UK, she first translated as a Coordinator for International Relations on the JET Programme, then developed her skills at an Anglo-Japanese business consultancy in London. On returning to Japan, she worked for several years at an investor relations consultancy as a proofreader and translator, before going freelance in 2009.

 



★カースティン・ソーニさんの記事はこちらでもご覧いただけます!★


サイマルではさまざまな言語・分野の翻訳者を募集しています!