通訳者の活躍する現場から【一般財団法人 日本国際協力センター(JICE)】

f:id:simul2019:20210423172113j:plain

通訳者の活躍する機会や場面は実に多岐に渡ります。今回は、日本国際協力センター(JICE)における通訳者の活躍について、国際協力推進部国際協力企画課副課長の石神萌さんにお伺いしました。

日本国際協力センター(JICE)とは

日本国際協力センター(JICE)は1977年に設立。2013年4月、一般財団法人への移行を機に「我が国と諸外国との互恵関係の強化に資する事業を通じて、国際社会の発展に寄与すること」を組織の目的としてあらためて定めました。

知をつなぐ。未来をつなぐ。世界をつなぐ」をキャッチフレーズに、開発途上国のみならず、国際社会全体を対象として、日本の中央・地方政府(官公庁)や外国政府、国際機関、公益団体、民間企業などから受託する「留学生受入支援」「国際研修」「国際交流」「多文化共生」「日本語教育」などの様々な人材育成事業に取り組んでいます。これらの事業を通じた国際社会の課題解決を担う人材の育成、および人材育成分野を中心とした持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を主眼に置いています。

JICEにおける通訳業務

JICEでは、通訳者を「コーディネーター」と称しています。現在31言語、約1,000名の方にコーディネーターとして登録いただいています。

コーディネーターの業務は多彩で多岐にわたりますが、「国際研修」「国際交流」「留学生受入支援」の3事業が中心です。事業ごとプログラムごとにコーディネーターの業務内容は異なりますが、どの事業・プログラムにも共通する業務の特徴は「言葉の通訳に留まらない。文化的・社会的背景の違いを踏まえ、円滑なコミュニケーションの橋渡しをする」こと、また「プログラムの進行やファシリテ-ションなど、プログラム実施スタッフの役割を担ってもらう」ことがあり、それがJICEのコーディネーターの役割と強みでもあります。

例えば医療・農業・経済・法律など、様々な専門分野の日本の知を各国に伝えるための「国際研修」事業では、主に講義や視察の場面で通訳を行います。この際、講師が話す事を通訳するだけではなく、研修生の出身国の当該分野の実情や課題等、背景を念頭におき、講師が意図するポイントがしっかり伝わるよう努めます。海外の方への説明に慣れていない日本の講師に対しては、サポートや提案をする事もあります。また、日本と世界各国の青少年の相互理解を促す「国際交流」事業では、学校訪問などの交流プログラムの中で、両国参加者間のやりとりが、より双方向のものとなるよう、そして次に繋がるきっかけとなる深い交流ができるよう、コーディネーターが声かけを行うなどして、両国参加者間を取り結びます。

各事業の目的は、専門分野の理解を深め自国へ適用すること、青少年間の相互理解を促進し未来に続くネットワークを構築することなど様々ですが、限りある短い時間の中で、各事業・プログラムの目的を達成するために何をすべきかという意識を持ち、JICEの事務局スタッフと共に、協力して業務を行っていただいています。

f:id:simul2019:20210423162054j:plain

活動の一場面

最近の通訳業務の傾向について

事業の対象地域が開発途上国だけではなく全世界に広がっている事、さらに直近では東京オリンピック・パラリンピック関連事業を受託した事など、事業の多種多彩化を背景に、コーディネーターの稼働言語数や業務種類が増えました。

また、2020年から続く新型コロナウイルスの影響は、諸外国からの入国制限措置という側面から、JICEの事業にも大きく出ています。各事業、オンラインでの実施に積極的に取り組む中で、コーディネーター業務においても、ZoomやTeamsなどを活用し海外と繋ぐオンラインでの通訳場面が、従前と比較して格段に増えています。JICEでは昨年12月に、サイマル・インターナショナルさんにご協力いただき「オンライン通訳」をテーマに、登録コーディネーター向けセミナーを実施しましたが、コーディネーター自身でもこれまでとは違うオンラインでの通訳力とITリテラシーの研鑽が求められていると感じています。ポストコロナを見据え、継続して技術を磨き、新しい事へ挑戦していく姿勢がコーディネーターにも必要とされています。

通訳者として大切にしてもらいたいこと

コーディネーター業務を通じて、海外からの研修員・留学生・青少年・政府関係者や、日本国内の様々な分野の講師、地方自治体や中央省庁等政府関係者など、国内外問わず沢山の関係者と接する機会や、立場・見識の異なる複数の関係者を繋ぐ場面があります。また、海外からの研修員・留学生・青少年の滞在や生活サポートを行う業務も沢山あります。通訳力はもちろんですが、常に「相手の立場にたち、相手を思いやり、寄り添う気持ち」を持つ一方で「JICEの一員として事業の実施を一緒に支える仲間意識」も大切に、両輪バランス良く、コーディネーターとして、各事業で活躍をしていただきたいなと思っています。

 

jice
石神萌(いしがみもえ)

(一財)日本国際協力センター国際協力推進部国際協力企画課副課長。コーディネーターの配置担当を務める。JICEホームページ:https://www.jice.org/index.html

 

 ■JICEコーディネーターの募集要項や業務詳細について


【あわせて読みたい】
 
 


 

通訳者・翻訳者
として働くなら
サイマルへ

サイマル・グループでは、世界との交流を共に支える通訳者・翻訳者を募集しています。あなたのキャリア設計や就業スタイルにあった働き方で、充実したサポート体制のもと、さらなる可能性を広げてみませんか。