英語母音の攻略【英語発音上達のコツ】

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レベルやキャリアを問わず、関心の高い「英語の発音」。英語音声学や発音指導のプロである青山学院大学准教授の米山明日香さんが、その上達のコツを、テーマごとに詳しく解説します。今回のテーマは発音向上につながる「英語母音の攻略」です。

英語母音の攻略が発音向上につながる?

英語発音矯正講座の受講生から「重点的に指導をしてほしい」というリクエストをしばしばいただくのは「“r”と“l”の発音の仕方」や「“th”の発音のコツ」といった子音です。このように、一般的には「日本人が英語発音で苦手とするのは子音である」と思われている節があります。確かに英語の発音と日本語の発音を比べた際、子音において顕著な相違がみられるのは事実です。

しかし「英語における母音の分布」と「日本語における母音の分布」がお互いに異なっていることに気づき、その相違を学習して適切な訓練を行うと、英語発音に向上がみられるのです。なぜなら、日本語には「あ、い、う、え、お」の5母音しかありませんが、英語には約20の母音があるのです(注)。それほど数に相違があるため、母音の学習は実はとても難しいのです。

といっても、英語の母音全てが難しいわけではありません。発音学習をする際は、英語の母音と日本語の母音で顕著に異なる点を、重点的に練習することが効率的です。では、どのような母音でしょうか。たとえば、日本語の「あ」に相当する母音です。


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[ ]内に2つ書かれているものは、前者が標準アメリカ英語、後者が標準イギリス英語の発音です。


「コミュニケーション上、発音はあまり重要でない」と考える方の中には「細かい母音の違いなど重要でない。聞き手は意味を推測できるわけだから」とおっしゃる方もいます。しかし、英語発音を向上させるという点でも、それがリスニングにも影響を与えるという点でも、細かい発音の違いは重要なのです。なぜなら、細かい母音の違いが意味の違いへと直結することがあるからです。上記に挙げた例にあるように、pat, pot, putt, partはすべて中央の母音が異なり、意味もそれぞれに異なります。

そもそも「細かい違い」という概念は、母(国)語の音体系において、母音(または子音)の数が少ない人が、外国語学習の際にその目標言語の母音(または子音)の数が多い場合に言うことが多いです。なぜなら、母(国)語に多くの母音があったとしても、その音体系の中で育った母(国)語話者は、それを決して「多い」と捉えることはなく「当然のこと」として捉えるからです。

やはり、語学を生業とする場合、聞き手には意味理解の負担をかけることなく、メッセージを伝えたいものです。

読者の皆さんも、一度じっくりと母音を勉強してみてはいかがでしょうか。




(注)学者によってその定義が異なるため、「約」という表現を用いています。


 

※この記事は2013~2014年にCAISウェブサイト内『通訳情報ステーション』に掲載されたものです。 

 

米山明日香(よねやまあすか)

青山学院大学社会情報学部准教授博士(文学)。専門は英語音声学、英語教育、発音指導、英語プレゼンテーションなど。大学卒業後、英国University College Londonに留学し、音声学修士号(MA in Phonetics)を取得後、日系航空会社勤務、通訳者、大学講師などを経て現職。公式ブログ:http://blog.livedoor.jp/bihatsuon/

 

 

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