通訳会社と通訳コーディネーターの仕事とは?【サイマル通信】

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通訳・翻訳業界で働くサイマルのスタッフがお届けする「サイマル通信」。エージェントの視点で、業界にまつわる話題や、スタッフの仕事など、好奇心をくすぐる話題をあれこれご提供します。今回は、通訳コ-ディネーターが通訳会社とコーディネーターのお仕事について紹介します。


皆さん、こんにちは。通訳コーディネーターのT.K.です。通訳コーディネーターは、決して広く知られた仕事ではないと思います。私自身も転職活動をする中で、この仕事とサイマルという会社を知りました。今回は、通訳会社や私たち通訳コーディネーターの役割についてご紹介します。

通訳会社、通訳コーディネーターとは?

サイマルのような通訳会社は、通訳を必要とするお客様からご依頼をいただき、その仕事を登録している通訳者さんに紹介するのが役割です。その中でも通訳コーディネーターは、通訳を必要とする会議やイベントの主催者さんと、実際に通訳してもらう通訳者さんに最も近い存在だと言えます。

通訳を必要とするお客様からお問い合わせをいただくと、担当コーディネーターが一貫してそのお客様の窓口となります。その案件の詳細やお客様の要望を引き出し、最適な通訳手配につなげるには、コーディネーターの手腕が問われます。お客様には、通訳を利用し慣れている方もいれば、全く初めてという方もいるので、お客様ごとにコーディネーションの方法や注意点も変わってきます。

お客様にイベントの詳細や要望をヒアリングし、それに合うように通訳形式や通訳配置、クラス等の手配内容を提案しながら案件を詰めていくという点で、コーディネーターにはコンサルティング的な役割も含まれていると思っています。だからこそ、コーディネーター自身も経験やスキルが求められます

難しいのは、我々が取り扱っているのができあがった「製品」ではなく、「人」である通訳者さんが提供する「サービス」であるという点です。人と人ですから相性や感情もあり、時にはそれらが通訳パフォーマンスやお客様のサービスへの満足度に影響を及ぼすので、架け橋である我々がうまく調整をする事が、当日のイベントの成功には欠かせないと考えています。

コーディネーターとして大事なこと

コーディネーターとして大事なのは「バランス」と「想像力」だと思っています。バランスとは、お客様、通訳者さんどちらにも偏り過ぎないバランスです。お客様志向が強いと、時に予算の都合等で通訳者さんにとっては無理な仕事をお願いする事になってしまいます。一方で通訳者さん志向が強いと、時に通訳者さんの環境や条件を守ろうとするあまり、お客様の要望の範囲内での手配が難しくなってしまいます。どちらにも偏り過ぎず、お客様、通訳者さん双方の意向にバランスを保ちつつ耳を傾け、双方が納得できる解決策を探るのが、コーディネーターとしての腕の見せ所になります。

「想像力」とは、それぞれの案件を想像する力です。コーディネーターは残念ながら、全ての案件の現場に行く事はできず、多くの場合はオフィスから案件をサポートします。さまざまな出来事が起こるのは実際の現場なので、行かない現場で起こりうる事態を想像し、先回りして確認をするには、想像力が必要になります。案件には一つも同じものは存在せず、定例の会議でも、その時により日時はもちろん参加者、議題、用意される資料、手配される通訳者等は毎回必ず異なります。前回と全く同じコーディネーションだけすればいいという案件は、ひとつも存在しないのです。

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コーディネーターの仕事の流れ

案件の受注~当日まで

正式に発注をいただいたら、当日に向けての準備に取りかかります。確認事項が色々ありますが、ポイントはその案件によって異なります。

例えば随行業務で集合場所はどこか(ホテルのロビー? 車寄せ?)。通訳者さんがどのタイミングで、どこでお昼をとれるのか。移動手段は何か。会議の逐次通訳であれば、通訳位置は講演者の声がよく聞こえ、講演者の顔や投影資料が見える位置か。通訳用のマイクは(メモが取れるように、ハンドではなく)スタンドマイクを用意してもらえるか。お客様は通訳手配以外にも様々な業務を抱えており、通訳に関する細かい点にまで頭が回らないケースも多いので、私たちコーディネーターには、そこを補う役割があります。

また、大事な業務のひとつが、お客様から事前にイベントの関連資料を入手し、それを通訳者さんに提供することです。通訳をあまり利用した事のないお客様は「プロの通訳者は準備など何もせずとも完璧な通訳ができる、だってプロだから……」と思っている場合もあります。通訳者は日々さまざまな分野の業務にあたっていて、その都度、事前に資料を読み込んで準備をしている」という事を理解してもらうところから始める場合もあります。

フィードバック

案件終了後には通訳者さんから終了報告を受け、お客様にお礼の連絡とともに、通訳パフォーマンス含むサイマルのサービスについてフィードバックを伺います。「通訳者さんのおかげで素晴らしい会になった」といったフィードバックをいただける時が、コーディネーターとして嬉しい瞬間のひとつです。

実際の現場に行けなかったり、行っても終始いられる機会は少ないので、こういったお客様からのコメント、通訳者さんからの終了報告で現場を感じられるときに、喜びを感じたりもします(時々、手配した案件の会議がニュースで取り上げられていたり、お客様から現場の様子を写真でもらったりする機会もあり、それも嬉しい瞬間のひとつです)。

以前、とある展示会に通訳者さんを40名ほど1週間に渡って手配した事がありました。その際は手配人数が多かったこともあり、期間中コーディネーターも現場に張り付き、通訳者さんの配置や休憩の調整などをしていました。

世界各国から、日本でのビジネスを夢見て商品を売り込むための展示会でしたが、中には日本に馴染みのない国からの出展で不安を抱えている出展者さんもいました。そんな中、担当した通訳者さんがその事を察して積極的にブース装飾のアイデアを出したり「日本人にはこういう売り方をしたら商品の良さが伝わりやすい」と提案したりして、出展者さんをサポートしているのを目にしました。
通訳者は言葉のプロではありますが、その根底には、語学を通して人助けをしたいという気持ちがあり、それこそが通訳者としての付加価値にもつながるのだなと感じました。その展示会では、大きな取引が成立して、出展者と担当通訳者さんが一緒に嬉しそうに私に報告してくれたのが、今でも心に残っています。

通訳コーディネーターという仕事に誇りをもって

「通訳」はもちろん言葉のプロですが、言葉は基本的にはコミュニケーションのツールであり、通訳業務の根底には「人と人をつなぎたい」「人助けをしたい」という気持ちが不可欠だと思います。私は能力的に通訳者にはなれませんが、通訳者さんとタッグを組んで人と人をつないだり、人助けができる通訳コーディネーターという仕事に誇りを持っています。そのような思いで働けているのは、サイマルがコーディネーションもお客様や通訳者さんに対して提供するサービスの一部として重要視しているためだと感じています。

今後もコーディネーターとして、多くのお客様、「人と人をつなぎたい」という通訳者の皆さまとご一緒できることを楽しみにしています。

通訳コーディネーター T.K.

 

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