日々多忙なビジネスマンにとって、毎日の健康管理は大事です。仕事はもちろん、快適な日常生活を送るために健康な体作りを心がけましょう。今回は、多くの人を悩ませる花粉症について、日本眼科アレルギー学会理事の庄司純先生にその特徴や対策などを伺いました。
そもそも花粉症とは
花粉症とは、花粉が原因で起こるアレルギーの一種です。さまざまな症状があり、一番多いのはくしゃみ・鼻水・鼻づまり(鼻炎症状)や目のかゆみ(結膜炎症状)ですが、皮膚のかゆみやお腹がごろごろするといった人もいます。症状の軽重にも個人差があり、花粉に対して感度が高い人は少しの飛散でも症状が出やすい傾向があります。
日本はスギ、海外はオーク、ブタクサがメジャー
日本では春先のスギ花粉が最も有名ですが、花粉症を引き起こす花粉は一年中飛んでいます。ヒノキやイネ科のカモガヤ、秋のヨモギやブタクサなど約60種類もあると言われており、人によっては複数の花粉症で、ほぼ一年中症状に悩まされているという人も少なくありません。
また北海道ではシラカバ、海岸線の付近では防風林で植えているクロマツによる花粉症など地域によっても特色があります。ちなみに海外では、オークやブタクサによる花粉症がメジャーです。
「あれ。もしかして花粉症……?」と思ったら
自己判断で症状悪化!? まずは病院で検査を
花粉症は、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなど他の病気と見分けがつきにくい症状が多数あります。そのため、毎年「あれ、花粉かな。風邪かな」と気にしながらも、多忙のために適当な市販薬を服用してやり過ごしているという人もいるかもしれません。しかし、似たような症状でも、別の病気の場合、その対策や治療が全く異なるため、治らないどころか症状を悪化させてしまう恐れもあるのです。
たまたまスギ花粉の時期にくしゃみやかゆみの症状が出て、検査をしたらハウスダストのアレルギーだったという患者さんがいました。長年、ずっと自分は花粉症だと思いこんでいたそうです。布団干しの際、花粉症では花粉が吸着してしまうため天日干しは厳禁ですが、ハウスダストではダニの死骸やカビなどを除去するために天日干しが有効と、その対策がまったく逆です。
また、ドライアイと花粉症も誤った自己判断をされがちです。目を酷使すると充血して乾燥した感じがしますが、花粉症の人がこれをドライアイと勘違いし、ドライアイ用の目薬をしていても、いつまで経ってもアレルギー症状は改善されません。
ですから、自己判断は避け「いつも同じ時期に同じような症状が出るな」と思ったら、まずは病院でアレルギー検査を受けるようにしましょう。検査によって自分の体質や症状の原因を正確に把握することが、花粉症の治療と対策の第一歩なのです。
くしゃみ、鼻水、目のかゆみ……症状が複数あるときはここを受診
複数の症状がある場合、病院のどの診療科を受診すればよいか迷う人もいるでしょう。先ほどもお話ししましたが、花粉症は症状の出方も軽重も人によってさまざまです。鼻炎がひどい人は耳鼻咽喉科、目がつらい人は眼科など、自分にとって一番深刻な症状がある科を受診すると良いでしょう。
つらい花粉シーズンを乗りきるための5つのポイント
花粉症の季節を少しでも快適に過ごすため、日常生活では下記の点に気を付けてみるようにしましょう。
室内に花粉を入れない、とどまらせない
花粉を室内に入れないのが一番大切。花粉が大量に飛散している期間は換気を控えるなどして外気を入れないようにしてください。また、花粉とハウスダストが混ざると、半永久的に室内にとどまってしまいます。こまめに掃除をして室内の花粉を減らすように心がけましょう。
静電気を起こしやすい服装を避ける
ニットやウール素材の服は、静電気により花粉が吸着しやすいと言われています。なるべくポリエステルやナイロンなど凹凸のないツルツルした素材の服を選ぶようにしましょう。ほかにも、家に入る前に軽く服をはたいて花粉を落とすなど、少しでも花粉量を減らすことを心がけてください。
メイクは帰宅後すぐ、花粉とともに落とす
花粉が付着していますので、メイクは帰宅後すぐに落とすようにしましょう。また、メイクをしない人や男性、お子さんなどは、メイク代わりに白色ワセリンを塗ることもおすすめです。これで花粉が直接皮膚に付着するのを防げます。帰宅後はメイク同様、すぐに落とすようにしてください。
自分の食べる物に意識を向ける
花粉症の人が果物や野菜などの食物を生で食べたとき、食物アレルギーを合併して引き起こすことがあります。これは「花粉-食物アレルギー症候群」といって、花粉症の原因物質と似た物質が食物に含まれているために起こると言われています。一例をあげると以下のようなものがあります。
・シラカバ花粉症の人:リンゴ、アーモンド、大豆製品など
・ヨモギ花粉症の人:セロリ、ニンジンなど
・ブタクサ花粉症の人:きゅうり、バナナ、メロンなど
症状は口や喉などのイガイガ感やかゆみ、腹痛などです。しかし、花粉症でも症状が出る人・出ない人もいます。神経質になりすぎるのも良くありませんが、体調の悪いときには急に重篤になることもあるため、注意が必要です。
繰り返しになりますが、まずは自分にどのような花粉のアレルギーがあるのかを検査して把握することが大切です。そして、どの食物をどのくらい食べたときにどんな症状が出るのかを自分自身で体感して、それから気を付けるようにすると良いと思います。
コンタクトレンズはできる限り避ける。装用するなら短時間に
結膜炎が起こっている場合、装用はなるべく控えたほうがいいでしょう。特に使い捨てコンタクトレンズを装用する人は外すのを我慢しがちですが、目には良くありません。目薬などでは症状は改善できませんので、どうしても装用したい場合は、装用時間は極端に短くし、症状が出たら無理をせず、すぐ外すようにしてください。
花粉症薬に関するギモンあれこれ
最後に、花粉症薬について知っておいていただきたいことを二点ほどお伝えしたいと思います。
目薬の「使用期限」は未開封のものに限る
よく「前年に処方されて余っている目薬は使えますか」という質問を受けます。目薬のラベルに使用期限が記載されていますので、一度確認してみてください。期限内で未開封のものであれば使用しても問題ありません。ただし、期限内でも一度開封したものはその限りではありません。開封後は一カ月をめどに使いきりましょう。
「花粉症薬は眠くなる」はもう古い
「仕事中に眠くなったり集中力が低下するのを避けたい」と薬(抗ヒスタミン薬など)を服用したがらない人がいます。しかし、アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬には、眠くなりやすいタイプと眠くなりにくいタイプの服用薬があるのをご存じでしょうか。
使用上の注意に「本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように」といった記載があるものは、眠くなりやすいタイプの服用薬です。一方、同じ抗ヒスタミン薬でも、比較的新しい非鎮静性第二世代抗ヒスタミン薬に分類される内服薬は、眠くなりにくいとされ、近年、多く処方されるようになりました。
ただし眠気の出方には個人差がありますので、眠くなりにくい薬でも眠気を感じる人もいますし、その逆の場合もあります。薬が合わないと感じたら、医師に相談するようにしてみてください。
いかがでしたか。花粉症について、知っているようで知らないことも多かったのではないでしょうか。一口に花粉症と言っても、症状や軽重、感じ方などは個人差があり、人さまざまです。ある人にとって効果的な薬や対策が、自分にも最適とは限りません。まずは自分の体質や症状をしっかりと把握し体感しながら、自分なりの花粉との上手な付き合い方を見つけるようにしてみてはいかがでしょうか。
日本大学医学部卒業。日本大学医学部助手、銚子市立総合病院勤務などを経て、現在は日本大学医学部臨床教授としてアレルギー専門外来とドライアイ専門外来を担当するほか、日本眼科アレルギー学会理事、庄司眼科医院院長などを務める。
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