実際に利用した通訳者が語るリアルな体験談:「interprefy(インタープリファイ)」

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先週に引き続き、遠隔同時通訳プラットフォーム「interprefy(インタープリファイ)」についてお届けします。今回は実際に「interprefy」を使用されたことのある3名の通訳者の方々に、当日の様子や使用された感想についてお話を伺いました。

 

お話を伺った方々(アルファベット順)

MM
M.M.

サイマル・アカデミー通訳者養成コース修了。外資系企業勤務・日系自動車会社の海外法人での社内通訳、サイマル・インターナショナルの専属通訳者を経て、現在はフリーランスの会議通訳者サイマル・アカデミーでの講師歴もある。

 

MT
M.T.

フリーランス通訳者。テレビ局勤務を経て、2004年サイマル・アカデミー通訳者養成コース修了。2014年より同校講師を務める。官公庁から民間企業まで幅広い分野の通訳を行っている。

 

YS
Y.S.

ロンドンメトロポリタン大学大学院会議通訳科修了。医療機器メーカー、コンサルティング会社などの社内通訳者を経て、2016年10月からサイマル・インターナショナル専属通訳者

 

「interprefy」をどのような案件で使用されましたか?

(注)「interprefy」はサイマルがサービス提供している遠隔同時通訳プラットフォームです。通訳者サイマル社内に設置された「通訳センター」などで対応しています。

 

M.M.:これまでに「interprefy」案件を2回経験する機会がありましたが、いずれも別々の企業の取締役会です。

 

M.T.:ある会社の取締役会で使用しました。

 

Y.S.:使ったのは、あるサービス関連会社の社内会議の通訳案件です。

どのように準備されましたか? 実際の会議現場で行う通訳と異なる点はありましたか?

M.M.:結論から言えば、通訳者にとっては従来の通訳ブースとそんなに変わらないと思います。画像もクリアーで、通訳者にとって何よりも大切な音質も良かったです。

 

M.T.:「interprefy」の使用が初めてでしたので、数日前に事前研修を通じて実際に機器を使わせていただき、使い方やモニターしている方とのチャットでのコミュニケーション等についてレクチャーを受けました。案件の準備については、直接お客様に疑問点の確認等ができないという前提で行わなくてはならないのが難しいと思いますが、これはどのリモート通訳でも同じで、慣れなくてはならないと思っています。

 

Y.S.:私が担当した案件では、資料は通常通り紙で提供されたため、普段の案件と変わらずに準備を進めました。現在はコロナ禍を受けて、紙の資料を用意していただくことが難しくなり、タブレットなどを活用してデジタルで資料を確認する動きが広がっていますが、資料がデータになったことで、同時通訳をしているときに耳障りになりがちな、資料をめくるノイズの問題も解決されるのはメリットだと思います。「通訳センター」のマイクは音量が安定していて、お客様にとっては通訳の聴きやすさにもつながったのではないでしょうか。

当日の様子や、実際に使用された感想をお聞かせください。

M.M.:「通訳センター」には、先方の会議室が映し出される比較的大きなモニター画面があり、向こうの様子を確認しながら業務を行うことができました。先方は会議室に参集(海外在住取締役のみネット参加)されていました。

 

2度目の業務で、出席者のお一人がマイクから離れてお話しになる傾向があり、マイクの指向性の問題なのか、その方の声をマイクが拾ってくれず困りました。「interprefy」で通訳を入れる際はマイクの前でお話しいただけるよう、あらかじめクライアントにお願いしておく必要があるかと思います。もし、業務中に問題があった場合は、パートナーにお願いして、Interprefy社の技術モニターさんとテキストチャットでコミュニケーションが取れるようになっています

 

この先パンデミックが収束に向かったとしても、以前のような「3密」会議室に通訳者がお邪魔して、というかたちに戻ることは当分無いか、頻度も下がるでしょう。通訳者が、遠隔でサービスを提供することは間違いなく増えていくと思いますので、他のシステムやツールと合わせ、一つの有効な業務手段として使いこなせるようになりたいと思います。以上限られた経験ですが、少しでも通訳者の皆様のご参考になればと思います。

 

M.T.:操作については、「通訳センター」の仕様が通常の通訳ブースと大きく変わらなかったという点で、思ったより簡単でした。今回は、パートナーの方と二人で「通訳センター」からの業務でしたので、交代タイミングも、お隣に合図をする通常と同じやり方で問題ありませんでした。

 

クライアント様の会議室の状況によると思いますが、今回は、スピーカーの音声と同じ音量で、多くの出席者の方々が紙資料をめくる音が聞こえてきたのが気になりました。この点をのぞけば、現場の音声は、電話やウェブ会議よりも格段にクリアで良かったと感じました。

 

また、Interprefy社側で常に技術モニターさんが見守ってくださるという安心感もありました。技術モニターさんとのコミュニケーションについては、チャットのほかに、会話を選択できるシステムがあり便利でした。特に技術モニターさんについては、普通の自宅からのコールインや他のリモート会議システムにはない機能なので、とても心強かったです。

 

全体の感想としては、本当に思ったより使いやすく、これがスタンダードになるならば、リモート同通も大丈夫!という気がしました。今回を機に、操作を忘れないうちにまた「interprefy」でのお仕事をしたいと思っています。

 

Y.S.:言語は日本語と英語のみだったので、そこまで複雑な操作は必要ありませんでした。通訳者側での操作は、出力言語のチャンネルを英語と日本語の間で切り替えることと、画面上でパートナーにマイクを渡す操作を行うのみです。

 

音もクリアで、音質に大きな問題はありません。一方、遠隔会議ではシステムを使うので、発言者はマイクに向かって話すように心がけます。遠隔での同時通訳でネックになるのは何と言っても音質(逐次であれば十分に聞き取れるような音質でも、同時の場合は通訳者自身の声が聞き取りを阻害するのでさらに高い音質が必要です)ですが、特に問題はありませんでした。パートナーとの切り替えもスムーズにいきました。

 

「通訳センター」からの通訳だったこともあり、パートナーが隣にいる安心感もありました。メモ出しなどのサポートは、直接やりとりを行うことができます。また通訳者が使っているPC の画面には投影資料が出るため、資料のどのページが参照されているかということが一目でわかり、そういった意味での利点もありました。

 

案件によっては万全を期して、実際の会議現場に通訳ブースを設置して行ったほうがいいものもあるでしょう。ただ、「interprefy」を活用できれば、クライアントにしてみれば通訳ブースの設置代や通訳者の交通費が節約できますし、スペースの節約にもつながります。特に日本語(英語)から英語(日本語)のみといった、一方通行の実況中継のような通訳では活用のシーンが増えていくのではないでしょうか。前述のようにある程度の音質が担保されているため、ウィスパリング通訳よりは「interprefy」を使った通訳のほうが通訳の質が上がる可能性は大いにあります。

 

「今回のコロナ危機を受けて、新しく生まれてくるトレンドもあるだろうが、すでに起こりつつあった変化がさらに加速化するだろう」という洞察を何かで読みましたが、通訳業界においても、これが当てはまるでしょう。今後は「interprefy」が選択肢の1つとして、広く認知されるように願っています。

 

『通訳・翻訳ブック』編集部

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