スキルアップのために必要な知識や情報、日々の仕事での失敗や成功のエピソードなどを、英⇔日翻訳者がリレー形式で執筆します。今回は、雑誌編集者、証券会社の翻訳・編集担当として、長年英日翻訳に携わった翻訳者の瀧垣内さんが、文章の表記の仕方について、何が大切かを話します。
何事でも細やかな配慮というものは決してマイナスになりませんが、和訳の場合も、正確で読みやすい訳文を作り出すための技術や知識以外に、語句の表記の仕方への配慮も大切だと考えています。多くは編集者の領域に入るのですが、例えば数字の書き方や、表記を漢字にするかひらがなにするか、中黒と読点の区別はどうか、といったようなことです。
漢字を含む単位表記では、例えば、表中に書かれている$111,111,111を文中で記載する場合、別途指示がなければ、1億1111万1111ドルと「億」と「万」の単位のみを漢字にするのがふつうです。また、最近は「一級河川」より「1級河川」のように、算用数字を使うことが多いようです。
漢字か仮名かについては、一般に副詞や形容詞、接続詞はなるべく仮名表記とし、主語になることの多い名詞や動詞は重要な意味を担うため、漢字を使うようにしています。そのほうが文章の中で目に飛び込んできやすいからですが、それも明確に決まっているわけではありません。
中黒(・)は読点(、)との区別が難しいのですが、ウィキペディアには「複数の単語を並列し、まとまった概念を示すときに、その区切りに使われる」と書かれています。私も、中黒でつながれる言葉は相互の関係性がより近いと感じていますが、両者の境界線はあいまいです。
こうした文章の書き方や決まりごとは、編集者であれば、例えば共同通信社刊の『記者ハンドブック(新聞用字用語集)』などの本を参考に厳格に守ります。ですが、翻訳者は編集者ではないので、もちろんそこまでする必要はありません。大切なことは、ひとつの文章の中でなるべく一貫性をもたせることです。ある程度の決まりごとに従って書かれた文章は、やはり見た目が美しい。なので、翻訳の作業でもそういう点に気を付けたいですね。
(注)この記事は、2014年8月に「サイマル翻訳ブログ」に掲載されたものです。
翻訳会社のコーディネーターや月刊経済誌の編集者、英国の証券会社調査部の翻訳・編集担当として、長年、英日翻訳に携わる。現在はフリーランスとして、主に金融・経済、時事問題などを中心に、「日本語らしい日本語訳」を念頭に仕事をしている。
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