レベルやキャリアを問わず、関心の高い「英語の発音」。英語音声学や発音指導のプロである青山学院大学准教授の米山明日香さんが、その上達のコツを詳しく解説します。2回連続で教材の選び方についてお伝えするシリーズの2回目です。
発音練習のための教材活用法
まずは前回の「発音練習をする際に適した教材の選び方」をおさらいしましょう。
今回はそれぞれの対象者と使用法・活用法について考えてみます。
発音に特化した教材
前回触れたように、発音練習をする際には(1)発音練習に使える音読用教材と(2)発音に特化した教材の2種類がありますが、それぞれ学習用途が異なります。一般には(2)を使って基礎的な発音の知識やメカニズムを学んだあと、(1)を使用して発音の練習とブラッシュアップにつなげる学習法が理想的でしょう。
では、(2)を学ぶのに適しているのは、どのようなケースなのでしょうか。
(2)では発音の方法やメカニズムを学ぶことを主目的としているため、以下の場合に特に適していると言えます。
- 英語の発音に自信がないので、発音を体系的に学習したい
- 特定の発音が苦手であることがわかっている(例: /l/の発音)
- 特定の発音の仕方がよくわからない(例: /r/をどうやったら上手に発音できるのか)
- 発音を指導する立場にある
- 音声学に興味がある
(2)の発音教材に関しては、専門家が著している教本であれば基本的に安心して使用できる場合が多いので、その教本にしたがって発音学習を進めていくとよいでしょう。 しかし、本を冒頭から網羅的に学習する必要はありません。自分の弱点だけを抜粋して学習してもよいですし、好きなところや興味のあるところから学習してもかまいません。
発音練習に使える音読用教材
一方で(1)の音読用教材を使用しての学習方法には、主に以下の3つが考えられます。
- 一般的な音読
- 録音音声を使用したリピーティング(※1)
- 録音音声を使用したシャドーイング(※2)
発音学習をする際は、2や3が効果的です。1を除外したのは、誤った発音のまま音読を繰り替えしても、発音の向上は望めないからです。だからといって2や3を長時間やみくもに繰り返しても、同じく発音向上は見込めません。したがって発音向上のために2や3を行う際は、できる限り正確に音声を聞き、正確に発音するように心がけることが重要になります。
では、どのような場合に2と3を使い分けたらよいのでしょうか。単音(母音や子音)を訓練したい学習者は2を、イントネーションやリズムを訓練したい学習者は2または3を行うと効果的です。
可能であれば、自分のパフォーマンス(特に2)を録音して、サンプル音声と聞き比べてみましょう。正確に発音ができているかを自分自身で確認することができるので、学習が円滑に進みます。さらに、この作業を定期的に行うことによって、自分の発音がどのように変化しているかわかるという利点もあります。
(※1)音声に続いてリピートする学習方法。音声を所々で止めて行うのが一般的。
(※2)音声を聞いた後、数秒遅れて復唱する学習方法。音声を止めず復唱することが求められる。
※この記事は2013~2014年にCAISウェブサイト内『通訳情報ステーション』に掲載されたものです。
青山学院大学社会情報学部准教授博士(文学)。専門は英語音声学、英語教育、発音指導、英語プレゼンテーションなど。大学卒業後、英国University College Londonに留学し、音声学修士号(MA in Phonetics)を取得後、日系航空会社勤務、通訳者、大学講師などを経て現職。公式ブログ:http://blog.livedoor.jp/bihatsuon/
【続きはこちらから】英語発音上達のコツ 最終回
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