事前準備は忍者ショーでもダライ・ラマ師でも【通訳のあんな現場・こんな案件】

サイマルとの最初の窓口になったり、通訳の現場に立ち会ったりと、様々な形でお客様や通訳者と接する通訳営業課。このシリーズでは、そんな通訳営業課のスタッフが、通訳現場でのあれこれや通訳サービス活用のヒントなどを不定期でお届けしていきます。今回のテーマは「通訳の事前準備」です。

最高の通訳を行うためには、事前準備が欠かせません。特に一流と言われる通訳者は、案件に関する知識や周辺情報はもちろん、通訳する方の著書や過去の講演内容などにいたるまで、できうる限りリサーチし、理解を深めて本番に臨みます。今回は、そんな通訳者のプロフェッショナルぶりを実感いただけそうなエピソードを2つご紹介します。

日本人も知らない? 専門用語だらけの忍者ショー

日本・アジア某国の二国間会議と懇親会でのことです。
コロナ禍以前はこの手の会議は頻繁に行われ、サイマルでも多数ご依頼をいただいていました。この時の開催場所はとある地方都市。手配した5名ほどの通訳者とともに、私もサポートとして現場入りしました。

大抵、どのような案件でも事前にお客様と確認や打ち合わせをさせていただきます。しかしイベントやショーなどの場合、細かい点は現場確認でとなることや、急な変更が生じることもしばしばです。
この日も、現場に到着するなり、代理店のAさんから「忍者ショーのリハーサルを見て、通訳を入れるタイミングを細かく打ち合わせしてきてもらえますか」と指示がありました。
え。細かく……? 確かに進行台本には「忍者ショー」と書いてありましたが、見学のお邪魔にならない程度に、かいつまんで通訳するというご要望だったのでは……?
そのため、通訳者への事前資料も概要だけしかいただいておらず、内心焦る気持ちを抑えてリハーサルへ向かいました。

アクションで見せるのが基本のショーとはいえ、忍者用語は、日本語ですら名前も説明も非常に専門的。「水遁(すいとん)の術」だの「手裏剣」だの「苦無(くない)」だの、技や武器名はあまりに耳慣れず、正確に聞き取るのも大変です。はてさて、これは一体どうしたものか……。

開催者と検討の後、通訳者には予定通り「“ここぞ”というところだけで合図を出しますので、逐一詳細までは訳さず、その部分だけ通訳をお願いします」とお伝えし、本番へ向かいました。
しかし本番が始まると、通訳者はとても細かく、すべてに通訳を入れはじめたではありませんか! 某国からのお客様も、うんうんと熱心に聞いて心から楽しんでいるご様子。結局、そのまますべてを通訳してもらうことになりました。
しかし、こんなニッチな忍者用語、即通訳できるものなのでしょうか……?

通訳者のおひとり曰く、その某国では忍者が大人気で、来日される方は必ずと言っていいほど忍者ショーをご覧になるのだとか。実際、その通訳者さんも忍者ショーの通訳を経験したことがあり、どんな突っ込んだ質問にも対応できるよう、今回、関連本を何冊も探して読みこんできたのだそうです。
資料以上の一歩踏み込んだ事前準備に、通訳者のプロ意識を感じた一コマでした。

通訳は話し手を理解してこそ! ダライ・ラマ師の講演会

こちらは少し時をさかのぼります。ダライ・ラマ14世が来日し、両国国技館で講演したときのエピソードです。
講演当日。会場には、ダライ・ラマ師を一目見ようと、チベットの方々をはじめ、家族連れなども多く来場され、とても温かい雰囲気に包まれていました。

ダライ・ラマ師の発言は、英語から日本語へは逐次通訳、日本語から英語は同時通訳という変則的な形式で行われました。逐次通訳を担当したのは、サイマルの創立者のひとりで、通訳業界のレジェンドともいわれる同時通訳者TKこと小松達也氏。TKは講演の間、ダライ・ラマ師の後ろで通訳をしていました。

講演終了後、大盛況の余韻が残るロビーで懇談していると、1人の女性が涙ぐみながらTKに駆け寄ってきました。「本当に素晴らしい通訳でした。ダライ・ラマ師が日本語で語りかけているような気持ちになり感動しました」とわざわざ伝えにいらしたのです。「通訳で人を感動させられるのか……」と感激したのを、今でも鮮明に覚えています。

さて。この感動的だった講演には後日談があります。
ステージ上で話し手の真後ろにいると、音の反響などで聞こえにくくなることがあるのだとか。実はこの日、TKもダライ・ラマ師の話が一部聞こえていなかったというのです。
え? では、あの流れるような通訳は一体……?
TK曰く「師の通訳をするにあたり、著書もすべて読んだし、過去の講演もできる限り聞いて特徴もつかんできたからね。講演のたびに、師が必ず触れる内容もしっかり頭に入っているから、多少聞こえない部分があっても、何を言っているかは大体予測できたよ」とのこと。

講演会などの通訳では、通訳者は資料だけでなく、話し手の特徴や話し方のクセ、よく使うキーワードや言い回しまで知り尽くし、講演や話し手について把握しようと努めます。TKのこの予測も、そんな事前準備や深い理解があってこそ。これも、素晴らしい通訳技術なのです!

 

【TK自身が語る、この日の通訳とダライ・ラマ師のこと】


今回は少しユニークな案件をご紹介しましたが、事前準備が大事なのはどんな案件でも同じです。
しかし、肝心の資料は、通訳者やサイマル側が準備できるものばかりではありません。案件ならではの表現やポイントなど、お客様からご提供いただく情報が多ければ多いほど、最高のパフォーマンスにつながります通訳者がスキルを最大限に発揮し、お客様にご満足いただける通訳を行うためにも、資料や情報の事前提供にご協力いただけると幸いです。

 

 
通訳営業課 M




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