英語子音の攻略(3)単語を大げさに練習する理由【英語発音上達のコツ】

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レベルやキャリアを問わず、関心の高い「英語の発音」。英語音声学や発音指導のプロである青山学院大学准教授の米山明日香さんが、その上達のコツを詳しく解説します。今回は3回連続でお届けする「英語子音の攻略」の最終回です。

大げさにゆっくり発音することで、音の感覚をつかむ

今回は、前回の「英語子音の攻略(2)」の内容を踏まえてのお話になります。都度、確認しながら読み進めていただくことをお薦めします。

 



さて、前回は子音を攻略する際のコツとして「単音を大げさに発音すること」を推奨しました。では、なぜ単音・単語レベルにおいて、そのような訓練を行う必要があるのでしょうか。

大げさな発音訓練をしてから句や文の練習に移行すると、単音や単語を練習した際の極端な音の特徴が緩和され、自然な発音になります。しかし、最初から目標とする音の特徴が弱いまま発音する習慣が身についていると(たとえばth の音の場合、摩擦が弱いなど)、句や文を発話した際、その音が持つ独特な特徴が残らずに不明瞭な音となってしまう恐れがあるからです。

よって、子音などの単音を練習する際には、最初に大げさに、そしてゆっくりと発音して、音の感覚をつかむことが重要です。

このことは、前回挙げた単語1~7をもう一度発話してみるとわかります。
「th[θ] を上手に発音するプロセス」の1において説明した内容とは異なり、実際は説明ほど舌を突き出してはいないですし、舌先が十分に出ていない状態でも、th の発音はできるのです。

また、それらの単語を使った1~6のような文や、普段発話を行う際は、上記の説明以上に舌先がさらに奥に引っ込むうえに「th[θ] の発音上のポイント」の3にあるような摩擦の度合いが弱くなるため、こそばゆい感じはしないのです。

その意味で、前回の最後に言及した「単音の時の発音の仕方と、文の時の発音の仕方が少し違っていたら、それは正解です」という記述は、言い換えると「単音レベルの発音と文レベル・自然な会話レベルにおいて発音上の特徴に程度の差が生まれることは、むしろ自然な発音の生成過程である」ということを指しているのです。

では、具体的に「th[θ] を上手に発音するプロセス」の1~3がうまくいかなかった場合、結果としてどのようなことが起こるのか検証してみましょう。

1の「舌先を十分に出して、上下の歯で舌を軽く挟む」がうまくいかない場合
 →/θ/ が /s/ に聞こえてしまいますので、think が sink に聞こえることがあります。
2の「1のまま呼気をしっかり出す」が上手くいかない場合 
 →/θ/ が /t/ に聞こえてしまいますので、think が tink に聞こえることがあります。


上記のように、think が sink または tink に聞こえるといった現象は、日本人英語学習者の典型的な発音上の問題ではないでしょうか。


こういった間違いが起こると、意味上の誤解を招くだけでなく、英語の質を下げることにもつながりかねません。したがって、こうした誤解を避けるためにも単音レベルでは大げさに発音し、発音する感覚が体になじむまで行うことが必要なのです。



※この記事は2013~2014年にCAISウェブサイト内『通訳情報ステーション』に掲載されたものです。 

米山明日香(よねやまあすか)

青山学院大学社会情報学部准教授博士(文学)。専門は英語音声学、英語教育、発音指導、英語プレゼンテーションなど。大学卒業後、英国University College Londonに留学し、音声学修士号(MA in Phonetics)を取得後、日系航空会社勤務、通訳者、大学講師などを経て現職。公式ブログ:http://blog.livedoor.jp/bihatsuon/

 

 

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