評価者に聞く! ビジネス通訳検定「TOBIS」のポイント

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通訳技能向上センター「CAIS」が運営するビジネス通訳検定「TOBIS」。企業・団体で活躍する通訳者のスキルを判定する試験検定として定評があります。今回は、TOBISの各級の評価ポイントや特徴などについて、長年評価を担当されている通訳者の百木弥生さんに伺いました。

評価の際に見ているポイントとは

TOBISはビジネス通訳の検定試験ですので、評価と採点は吹き込まれた音声のみに基づいて行われます。ここが文字やマークシートで選択された答案に対して採点を行う他の検定試験と大きく異なる点です。

通訳業務は 

  1. 話者の発した音声を言葉として正しく聞き取り、そこから話者が伝えたいメッセージを理解し、
  2. 理解した内容を、情報を落とすことなく(記憶、ノートテーキング)、聞き手に伝わるように(聞き手が理解できる他言語で)即座に表現する

ことが求められます。翻訳とは異なり、文字ではなく音声で伝えるわけですから、本当に聞き手が理解できる形でメッセージが届いているかどうかが重要です。

従って、採点に際しては、あくまで「聞き手側」の立場に立って評価をするのが大前提です。 

各級に共通する評価ポイントは、概ね以下の4点です。

  1.  オリジナル のメッセージに含まれる情報の正確さと量
  2.  文法、構文力 
  3.  聞き手にわかり易い発音や自然な抑揚
  4.  知識に裏付けられた適切な表現と語彙の選択

さらに、4級から1級に級が上がるにつれ、より細かく評価を行います。

◆4級

比較的簡単なビジネス会話のキャッチボールを成立させるだけのコミュニケーション能力があるかどうか を見ています。

◆3級

企業で求められるビジネスや時事、一般常識をトピックとする短文を、ある程度の精度を保ちながら聞き手に自然に伝わる形で訳せるかどうか、がポイントとなります。

◆2級

ロジックを伴う長文を逐次通訳することが求められます。背景知識を基に、文脈を意識しながら論旨を追い、それをメモにとって忠実に再現できるかどうかがポイントです。本格的なノートテーキングのスキルを伴ういわゆる「通訳力」が試されるのはこのレベルで、取得できればプロへの登竜門と言ってもいいでしょう。

◆1級

2級と同程度の内容を同時通訳しますので、上記評価ポイントに加え、瞬発力と集中力の持続が必要になります。同時であっても、聞き手がストレスなく聞くことができるパフォーマンスになっているかがポイントとなります。

各級判定でよく見られる受験者の不足点について

4級不合格者で一番多いのは、単純に非母語力の不足です(文法、語彙力、リスニングを含めた非母語のComprehension力)。今まで学校では英語が得意だったはず、という人でも、音で聞いて内容を理解し、それを即座に他言語で表現することにはかなりの負荷を感じるはずです。いくつもの処理を同時に行うには「余力」がなければなりませんが、その余力を持てるほどの語学力がない人が多く見られます。

3級不合格者には、

  1. 帰国子女で日常会話は流暢でも、 ビジネスや時事の話題にはあまり触れたことがなく、知識の欠如が露呈してしまう
  2.  知識も語彙力もあり、言葉はたくさん出すものの相手に伝わらない


の2パターンが多く見られます。前者は企業財務の基礎を勉強したり、ニュースを通して世の中の流れを把握するなどして、知識・語彙を強化することが必要です。後者のように非母語のアウトプットが弱いと指摘された人は、「今さら」と思わず、文法を見直したり、場合によっては発音矯正を考えるなど、時には原点に立ち戻ることも必要です。

3級は通過できたものの2級に今一歩届かない受験者には、単語は書きとっていても、ロジックをメモに取っていない(あるいは理解できていない)人が多く見られます。ロジックを含む長めの文章でノートテーキングをたくさん練習してください。また、少し難易度が高いと思えるマテリアルを使い、完璧に消化できるまで繰り返し練習するのもお勧めです。

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通訳スキルを高めるために専門訓練の受講は必要か

専門訓練を受けるメリットは色々あると思いますが「自分のレベルに合ったカリキュラムで段階的に上をめざしていくことが出来る」「プロの通訳者から客観的評価と個別指導を受けることが出来る」という点が大きいと思います。弱点は知人・友人からはなかなか指摘してもらえないものですし、安心して恥をたくさんかくことが出来るのも、教室という特殊な環境(対面、オンラインに関わらず)ならではだと思います。実力向上のためには日々練習が必要ですが、その方向性を示してくれるのが通訳学校だと思います。長年我流で通訳をしてきた人でも、弱点を克服するためにあらためて専門訓練を受けるという方はたくさんいます。また、多くの通訳学校は通訳エージェントが運営していますので、キャリアパスの観点からもメリットはあると思います。

受験を検討している人へのメッセージ

TOBISは単に級判定を受けるための検定試験というより、テストのパフォーマンスに対して細かな個別アドバイスが受けられることに価値があると思います。採点にあたっては時間をかけ、時には吹き込み音声を何度も繰り返し聞いて、受験者に寄り添ったコメントを書くことを心掛けています。将来ビジネス通訳者や会議通訳者をめざしている人、ビジネス通訳者としてもっと上をめざしたい人、はたまた単に腕試しをしてみたい人など、受験の目的は様々だと思いますが、是非TOBISという機会を活用し、一歩上をめざしてみてはいかがでしょうか。

皆様の頑張りを応援しています。



百木弥生さん
百木弥生(ももきやよい)

上智大学外国語学部英語学科卒業後、酒類メーカー勤務、翻訳業務・フリー通訳者を経て、サイマル・インターナショナル専属通訳者になる。官民幅広い分野で会議通訳者と活躍するほか、長年サイマル・アカデミーでも講師を務めている。

 

 

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