第5回 アメリカ――アメリカでの通訳の一例【世界の通訳事情】

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このコラムでは、海外に在住し、現地で活躍する日本人の通訳者が、海外ならではの通訳事情やエピソードについてリレー形式でお話します。今回はアメリカ・ワシントンDCに在住の吉永まなぶさんです。

独立までと仕事の傾向

こんにちは。ワシントンDC在住でフリーランス通訳をしている吉永まなぶ(女性)です。オペア留学をきっかけに、2002年秋からアメリカに住んでいます。大学院修了後、H1-Bビザで就職し、社内通訳者・翻訳者として2社に勤務し、3社目の会社が、私の永住権(グリーンカード)のスポンサーです。永住権を取ったことで、2016年に独立することができました。

 

永住権スポンサーとなった勤務先が、ワシントンDCを拠点に日本の行政機関から調査案件を受注していたこともあり、通訳として独立した現在も、政治の中心であるDCでは、行政に関するヒアリングや表敬訪問が多くあります。会議やイベントで立法や時事問題が取り上げられるため、準備には一次情報だけでなく、二次情報として中立、右派、左派の報道や分析も確認しています。

 

DCには警備が厳重なビルが官民問わず多く、米国以外の外国籍であれば、事前に旅券情報の登録を求められることもありますし、当日の入構のためアメリカの免許証だけでなく、パスポートも持参することが多いです。金属探知機や荷物検査も往々にしてあり、時には電子機器の持込みが禁止されている部屋もあるため、余分な荷物は極力少な目に、単語帳や資料は手書きか出力版で持参します。

 

出張でDCを離れるとトピックは様々です。行政の場合、連邦・州・地方の連携や、州独自の取組みについて通訳を行います。行政以外では、電力、IT、農業、製造などがあります。訪問先とタイミングによって普段は見られない風景に出会うのは出張の楽しみでもあります。

 

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コロラド州ロッキーマウンテン国立公園にある海抜12,000フィート(約3,658メートル)のトレイル終点

 緊急時の蓄えをしよう

グリーンカードを受け取ってから1年半ほど正社員として会社勤めを続ける傍ら、有給休暇や代休を使い、副業として通訳業務を増やしていきました。その時に出会ったベテランの通訳者さんたちが、仕事が十分入ってきているか声をかけてくれたこともあり、フルタイムの通訳者として独立してからは、忙しさであっという間に時間がたちました。

 

しかし、新型コロナウイルス対策として、ワシントンDCでは2020年3月30日から外出禁止令(食料品や生活必需品の入手、不可欠なビジネスへの従事、一部レクリエーション活動の許容あり)が発出され、多くの州でも外出が禁止されていることから、通訳の仕事にも影響が出ています。

 

上記を受け、複数の通訳エージェントから電話・ウェブ会議やRSIの可能性について連絡はありましたが、実績につながったものはありません。現在は、以前に通訳を受けた行政トピックについて少量の翻訳をしています。

 

こんな時、緊急時の備えを無視することはできません。お財布事情は個々に大きく異なりますが、米国では3か月から8か月分の生活費を緊急用として持つべきと言われます。私の場合、会社員として受けていた福利厚生を失う代わりに、独立してまずは6か月分の生活費を緊急用として貯金しました。

 

外出禁止令により、ギグエコノミー労働者の失業も多く、2020年3月27日に成立したCARES法(コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法:日経新聞訳)により、一時的に失業保険受給資格が拡充され、バイトやフリーランスも申請が可能になりました。

ワーク・ライフ・バランス

今は思いがけず余暇がありますが、通常仕事が忙しく、運動や趣味が疎かになることもあります。運動不足解消のためにカレンダーにヨーガをやった日と印をつけたり、カメラを目につく場所に置いて、休みの日にはカバンに入れて持ち歩くよう心がけています。

 

ボーナスとして、趣味で学んだ言葉や表現が仕事に活きることもあります。ヨーガインストラクターの通訳があったとか、カメラレンズの仕組みを説明する会議があったとか、こういう偶然があると、言葉は有機的なもので、その習得に限りはないと再確認します。

 

私が英語を勉強しようと思ったきっかけは単純です。12歳の時、歌手・マドンナの「ブロンド・アンビション・ツアー」をテレビで見て衝撃を受け、日本の学校で地道に英語を勉強しました。アメリカは、大学卒業後会社を辞めてオペア留学に参加するまで、テレビや映画の中の世界でした。

 

2002年の渡米直後に感じた新鮮さが今も同じと言えば嘘になりますが、ビジネススーツにカウボーイブーツを履いたテキサス人(本人自慢のブーツだったとのこと)の通訳をしたり、中西部で広大な土地を見ると「アメリカだなぁ」と内心呟く瞬間もあり、まだまだこの国への興味が薄れることはありません。

 

ポップシンガーへの憧れから派生した英語への好奇心に端を発したアメリカへの道が、通訳という仕事のおかげで、この国で自立し生活をする力につながったことを幸運に思います。

 

 

吉永まなぶ
吉永まなぶ(よしながまなぶ)

ワシントンDC在住のフリーランス通訳者。神田外語大学外国語学部英米語学科卒業。オペア留学修了。ノースカロライナ大学シャーロット校リベラルスタディーズ修士課程修了。H1-Bビザから永住権を取得。(左の写真はワシントンDCの桜)

 

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