サイマル専属通訳者としての道【マイストーリー・番外編】

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サイマル・インターナショナルの専属契約制度をご存じですか。専属通訳者は、サイマルからの通訳業務を専門に対応し、会議通訳者を見据えたキャリア形成や、先輩通訳者のパフォーマンスから学べる環境など、スキルや経験値の向上を図る機会も得ることができます。今回は「マイストーリー」番外編として、社内通訳者などを経てサイマルの専属通訳者になった佐藤祐大さんが登場。専属となった経緯やメリット、フリーランスをめざす方々へのメッセージなどをお伝えします。

通訳者」から「サイマルの通訳者」へ

サイマルの専属通訳者になってから4年が経ちます。ちょうど、ブラジル・リオでのオリンピック・パラリンピックが終わったくらいのタイミングで、サイマルの専属通訳者として稼働を開始しました。

サイマルは業界の最大手で老舗なので、ハードルが高いイメージがありました。サイマルに専属制度があるというのは何となく知っていたのですが、私はサイマル・アカデミーで通訳訓練を受けたわけではなく、海外の大学院で会議通訳の修士号を取得したので、サイマルの専属通訳者になるという選択肢があるとは思っていませんでした。ただ、趣味で英会話のクラブに通っており、そこで会った方が、たまたま当時のサイマルの社長と同窓会で会ったということで、会議通訳の修士を持っているのであればスキルチェックを受けてきたらどうかと背中を押してくれました。その後押しがなければ、今でも社内通訳者を続けていたかもしれないので、その方にはとても感謝しています。

スキルチェックを受けた後、サイマルから専属通訳者になりませんかというオファーをいただきました。イメージとしては、サイマルがよしとする通訳のスタイルがあり、それをめざしてアカデミーで指導が行われ、その中でもさらにサイマルらしい(といっても私の勝手な思い込みだったようですが)人を専属通訳者として採用するイメージがあったので驚きましたが、まずは安定して経験を積みたいと思い、お受けすることにしました。

サイマルの通訳者になって驚いたこと

いい意味で驚いたのは、通訳業界は結構フェアな世界であるということです。まず、サイマル・アカデミーを出ていない私に専属通訳者にならないかというオファーがあったこともそうですし、クレームが出た場合もコーディネーターの方が音質や資料の提供状況などについても調査をし、通訳者の言い分も確認します。クライアントのいうことを鵜呑みにせず、良質な通訳が可能な環境になっていたのかどうかきちんと調べてくれます。基本的にはフリーランス、また専属通訳者であっても個人事業主で、毎年の契約更新になるので、1度でもクレームがついたらすぐに切られてしまうのかと戦々恐々としていましたが、きちんと調査をして判断してくれるのだということがわかって安心しました。

また、ある機会にサイマルの方が「好品質」な通訳を提供していきたいとおっしゃいました。あくまで私の個人的な解釈ですが「高」ではなく「好」になっている理由は、同じ通訳者であってもクライアントによっては高く評価してくれるし、そうでないこともあります。様々なタイプの通訳者がいるので、それぞれの特長や個性を把握し、より相性の合うであろうクライアントや案件とのマッチングを行っていきたいということではないかと理解しました。

 

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専属通訳者のメリットとは

サイマルの専属通訳者であることのメリットは、やはり安定して案件を入れていただけることだと思います。クライアントからはよく「通訳さんにも専門分野があるんですか?」と聞かれますが、通訳者自身が自分で狙って得意分野を育成することはなかなか難しいです。結局は市場の動向に依存します。ただ、そういった中でも自分がチャレンジしてみたい分野について、機会があるたびにエージェントにアピールすることは重要です。私は政治経済に興味があり、事あるごとにそうサイマルに伝えてきたため、そのような案件もいくつかいただいています。サイマルは単純に持っている案件の幅が広いので、個人の興味に合った案件を紹介してくれます。

また、先輩方と組ませていただき、色々とアドバイスをもらえることも大変魅力です。通訳業界は上下関係が厳しいというイメージがあるかもしれませんが、実際は気さくな方が多いです。3人体制の仕事では「自分が駆け出しの頃、ブース席の真ん中に座り、先輩に挟まれて緊張したから」と進んで真ん中に座ってくださった先輩もいますし、私が訳出に苦しんでいたときにさっとマイクを取ってくださった先輩もいます。

それに、先輩の姿勢からも多くを学ぶことができます。以前、大先輩と海外出張をする機会に恵まれたのですが、事前に聞いていなかった動画資料が通訳中に突然使われるということがありました。大御所の先輩は「おや、聞いてないぞ?」とこっちを見て首をかしげられましたが、淡々と通訳をされました。また、英語で原稿を読むはずだった中国人の参加者が、直前で「どうしても自信がない。中国語の原稿を読むので、それに合わせて英語の原稿を見ながら日本語に通訳して欲しい」と急に依頼されたことがありました。中国語なので終わるタイミングがずれるかと心配になりましたが、大先輩はスムーズに対応され、申し合わせたようにぴったり終わりました。このような大御所の先輩と組ませていただけるのは、とても緊張しますが、若手の専属通訳者の醍醐味だと思います。先輩方は歴史的な節目に立ち会ってこられているので、合間の雑談もとても貴重です。

スキルアップのために日々行ってきたこと

周囲からレベルアップが早いと言っていただくことがあるのですが、もし何か理由があるとしたら、案件ごとの準備をしながらも、長期的に通訳力の底上げを図ってきたからかもしれません。『日本経済新聞』の社説のサイトラを、プロとしてスタートしてから今までの4年、毎日続けました。

それに加え、1日30分は『The Economist』を読むようにして、政治経済・社会の用語にコツコツと慣れるようにしてきたことも効果的だったと思います。

フリーランスへの転向を考えている通訳者の皆さんへ

新型コロナウィルスにより、海外との人の往来は激減しているので、今は社内通訳からフリーランスに転向するには厳しい時期かもしれません。リモートでは通訳は使いにくいというイメージがあり、これをきっかけに英語をマスターする日本人が増え、通訳の需要が構造的に失われるかもしれないと心配していました。しかし実際は、ほとんどのクライアントが試行錯誤しながらリモートで通訳を使い続けるという選択をしたようです。そのため、新型コロナウィルスの状況が落ち着けば、通訳の需要はある程度のところまでは回復するのではないかと思っています。

今後フリーランスに転向される方は、ハードルの高そうなエージェントだからと敬遠せず、ぜひサイマルにもコンタクトしていただきたいと思います。

いつか皆さんと一緒に仕事ができるのを楽しみにしています。特に数の少ない同世代の通訳者がもう少し増えればうれしく思います。




佐藤祐大
佐藤祐大(さとうゆうだい)

ロンドンメトロポリタン大学大学院会議通訳科修了。医療機器メーカー、コンサルティング会社などの社内通訳者を経て、2016年10月からサイマル・インターナショナル専属通訳者

 

 


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