開発途上国への国際協力を行う「独立行政法人国際協力機構(JICA)」。前回に続き「研修監理員」についてご紹介します。今回は、20年以上に渡りポルトガル語の研修監理員を務めるキムラ・カルロス・アルベルト・ヒロシさんに、仕事で心掛けていることや、やりがいなどについてお話を伺いました。
特に印象的だった案件の内容とその理由
【まずは前回のおさらい】
これまでの案件で印象的だったことは、研修員から「日本に来て安心した」と言われたことです。「研修を通してその研修課題の日本における政策の説明を聞き、実施されている計画の内容や現場を知る・見ることで、自国の政策の方向性と一致していることが確認できた。理論的にその政策が適切と分かってはいたが、具体的にどのような成果が期待され、どのような課題がありうるか知ることができた」と話してくれました。
その説明を聞き、研修員が来日して日本の現状を「知る」ことがいかに重要であるか再確認できたと同時に、研修監理業務の必要性と重要性も再認識することができました。
研修監理員の仕事のやりがい
ポルトガル語圏諸国は、特にアフリカ大陸において英語圏や仏語圏と比べて独立以降、紛争が長く続いたこともあり「国づくり」への取り組みが「極めて最近」といえます。
特に南部アフリカ諸国が本格的な取り組みを開始したのは90年代以降のことです。 毎年来日する研修員を通して各国の「国づくり」の進行状況を知ることができ、さらに研修内容が帰国後各研修員の職場で反映されているという成果を感じとれることが最も大きいやりがいです。
特に南部アフリカ諸国の場合、政策や法整備のペースが激しく、研修員の言動や行動、興味のある課題内容から各国の社会における「ものごと」に対する著しい意識の変化を感じます。
例えば、ある機関の研修員の主な関心事が以前は資機材中心だったのが、最近では業務体制にまで拡大していることがよくあります。更に以前と比べて市民の生活改善に取り組む姿勢がより強くなってもいます。
仕事をする上で心掛けていること
研修監理業務における心掛けは研修員に対する部分と研修内容に関する部分があります。
研修員に対する心掛けは肉体的又は精神的な健康管理のサポートです。具体的には、近年インターネットの普及・充実により研修員が「ホームシック」になることは軽減されているものの、日本との時差のせいで昼間は研修に集中して夜間はオンラインで自国の職場の仕事をしていることが増えてきており、オーバーワークになる傾向が強くなっています。そのため十分休むように助言・サポートし、日本の社会について見学・体験させることで頭をリフレッシュできるようにサポートしています。
研修内容に関しては、課題とする分野の日本における歴史的背景を可能な限り調べています。日本における各分野の背景を知ることで研修員がより研修内容を理解できるようにしています。また出身国が違えば各研修員の課題も異なります。各国の政治・経済・社会情勢を可能な限り把握しておくことで、研修員が背景の違いも含めて説明できるようにサポートし、研修員同士や講師との相互理解の促進にも努めています。
研修監理員をめざしている人へのメッセージ
ひとことで言うと研修監理業務を「楽しんでください」。研修は専門用語が多く大変そうに思われがちですが、「心配しすぎる」必要はありません。もちろん通訳・翻訳業務の準備をする必要はありますが、講師も研修員もその分野の専門家です。研修監理員または通訳の大事な役割は、その専門家同士の信頼関係を作り上げるためのサポートです。研修監理員が研修員や講師、研修関係者と信頼関係を築き、ともに研修を「楽しむ」ことで、より研修内容の理解度が深まることに繋がります。
また研修を通して背景の異なる社会から来日する研修員だけではなく、様々な専門を持つ方々に「出会う」ことができ、自分自身も世の中について広く知り「人」として成長できる職業だと思います。
1965年ブラジルサンパウロ市生まれ。サンパウロ大学歯科医学部及びブラジリア大学国際関係学部卒業後、1991年に来日し、日本大学大学院国際関係 研究科修士課程を修了。1996年からJICA研修監理員(ポルトガル語)を務める。
通訳・翻訳をキーワードに、仕事に役立つ情報からウェルビーイングに関するトピックまで、幅広い記事をお届け中。
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■独立行政法人国際協力機構(JICA) オフィシャルサイト
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