第1回 JCI認証とは【JCI認証取得に関わる通訳:病院の現場から】

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患者さんが安心して医療行為を受けられるように、安全で高品質な医療が提供されていることを証明するJCI認証。認証を受けるための審査は通訳のニーズが高い現場です。湘南鎌倉総合病院でJCI審査準備の対応をされている石田亜紗子さんが、その概要と通訳者に求められるスキルについてお話しします。第1回のテーマは「JCI認証とは」です。

JCIの概要

Joint Commission International (以下JCI)とは、米国の医療機関認証組織Joint Commission(以下JC)を母体とし、70か国以上で医療の質と安全性を評価しているグローバルな非営利認証機関です。

JCは1951年に創設されましたが、その起源は1910年にアーネスト・コッドマン医師が考案した、外科手術患者の退院後の状態を追跡し、診療の質を結果によって評価するシステム(End-Results System Standardization)と言われています。(参考1)

JCIは、1994年に設立されました。多くの医療機関と協力し、今日では審査を行うサーベイヤーと教育的な側面からJCI認証を支援するコンサルタントのチームを擁し、幅広い活動を行っています。(参考2)

JCIは、8つの認証プログラム(大学医療センター、外来診療、在宅医療、病院、検査、長期療養施設、医療搬送施設、プライマリケア)を提供しており、自施設の機能に合わせたプログラムを受審します。認定基準書(スタンダード)を発行し、その基準書には医療の質向上と患者安全を確実に提供するために、病院に求める要求項目とその趣旨、それらに関連するエビデンスや最新の参考文献に関する情報が記されています。認定基準書は様々な医療関係者や専門家が集まり、多くの組織と協力して作成されています。

プログラムにより基準の数などに違いがあります。2020年4月に発刊された病院プログラムでは、患者中心の基準と医療機関管理基準の2つのセクション、13チャプターからなっています。

患者中心の基準

1. International Patient Safety Goals (IPSG): 国際患者安全目標
2. Access to Care and Continuity of Care (ACC): ケアへのアクセスとケアの継続性
3. Patient-Centered Care (PCC): 患者中心のケア
4. Assessment of Patients (AOP): 患者の評価
5. Care of Patients (COP): 患者のケア
6. Anesthesia and Surgical Care (ASC): 麻酔と外科的ケア
7. Medication Management and Use (MMU): 薬剤の管理と使用

医療機関管理基準

8. Quality Improvement and Patient Safety (QPS): 医療の質の改善および患者の安全
9. Prevention and Control of Infections (PCI): 感染の予防と管理
10. Governance, Leadership, and Direction (GLD): ガバナンス、リーダーシップ、および監督
11. Facility Management and Safety (FMS): 施設管理と安全性
12. Staff Qualification and Education (SQE): 職員の資格と教育
13. Management of Information (MOI): 情報管理

 

  JCIは、上記13チャプターに関する要求項目の順守・改善を医療機関に求め、3年に1度の審査を通して、医療の質と患者安全を向上していく仕組みになっています。

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写真提供:湘南鎌倉総合病院

審査の流れ

受審をする医療機関の規模によって若干の違いはありますが、基本的には5日間、3人のサーベイヤーが現地に入り審査を行います。規模により審査日数やサーベイヤーの人数が調整されます。サーベイヤーは、臨床や病院管理に関する高度な専門知識をもとに、認定基準書に基づいて審査を実施していきます。

JCIは、2020年3月から5月までコロナの影響により審査を行っておりませんでしたが、6月に入り、Zoomなどのオンライン会議システムを利用したハイブリッドまたはバーチャルな審査を再開しています。ハイブリッド審査は、サーベイヤーが最低1名現場に入り、残りのサーベイヤーはオンラインで審査を行います。バーチャル審査は、どのサーベイヤーも現地入りせず全員がオンラインで審査を行います。


通常の現地入りをする審査でもオンラインでの審査でも、審査の流れが変わることはなく、以下の手法で行われます。

セッション

病院の方針手順の文書レビューや、サーベイヤーと病院職員によるインタビュー・ディスカッションを通して評価します。

患者トレーサー

現場に出向き、カルテの記録や職員、患者へのインタビューを通して、来院から退院までに提供された病院サービスや治療、ケアを追い、基準を満たしているか評価します。

システムトレーサー

病院運営上、特にリスク管理が求められる施設管理や薬剤管理、感染管理の体制が構築され、該当部署や現場で十分な対策が講じられているか評価します。

部署トレーサー

手術室や中央材料室、内視鏡室へ直接行き、病院で決められた運用を実際に実施しているかを評価します。

品質測定トレーサー

現場にて職員へのインタビューや品質データの分析を通して、患者のケアや病院のサービスをどのように品質改善活動を通して向上しているかを評価します。


5日間すべての詳細なスケジュールは省きますが、8:00~16:00の間、事前に組まれたスケジュールをもとに審査を受けることになります。

 

(参考1) The Joint Commission: Over a century of quality and safety
https://www.jointcommission.org/-/media/tjc/documents/about-us/tjc-history-timeline-through-2019-pdf.

(参考2)worldhospitalsearch.org
https://www.worldhospitalsearch.org/the-value-of-jci-accreditation/who-is-joint-commission-international/


医療法人沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院 
人材開発室/JCI事務局 石田亜紗子(いしだあさこ)


アメリカの看護大学を卒業し免許を取得。看護師を経験後、日本に帰国。その後、治験コーディネーターを経験し、現病院の国際医療支援室にて外国人患者の通訳・翻訳対応やJCI事務局として勤務。現在はJCI審査準備の活動を通して、職員への投資がより医療の質や安全向上につながると考え、院内の人材マネジメント体制の構築に従事。

【続きはこちらから】第2回 通訳者に求められること

 

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